マレーシアで停滞するワクチン接種
6月末までロックダウン延長の中、カギを握る住民の意識啓発

  • 2021/6/19

 新型コロナの感染拡大は、変異株の出現によって世界中に新たな局面をもたらしている。6月1日から全国でロックダウンを実施しているマレーシアも、新たな戦いに突入した。5月30日付のマレーシアの英字紙ザ・スターは、社説でこの問題を採り上げた。

マレーシアではワクチン接種が計画通り進まず課題になっている (c) Anna Shvets / Pexels

インドを上回る感染率

 マレーシアでは、一時期抑制されていた新型コロナ感染が再び拡大し始め、6月1日から2週間の予定で全土を対象に経済活動や移動を制限するロックダウンを実施している(6月11日にロックダウンは28日まで延長された)。同国では、4月に入ってから1日あたりの感染者数が上昇し始め、5月末には9000人を超えた。また、各種報道によると、マレーシアでの人口100万人当たりの新規の感染者数は、5月26日までの7日間平均で211人となり、インドの165人を上回ったという。
 このような状態の中、社説はワクチンの接種率を上げることが非常に重要だ、と主張する。しかし、ワクチン接種のための登録率は州や地域ごとにばらつきがあり、連邦直轄の首都圏プトラジャヤでは100%、クアラルンプールでは67%、セランゴール州では65%、サラワク州では58%に達している一方、サバ州では18%、ケランタン州では32%と、極端に低い。
 「接種登録しない人たちは、メッセージを受け取っていないのだろうか。今後2週間、感染予防策に従って全国規模で厳しい行動制限が実施され、感染者数の減少が期待されているが、感染拡大が続く状況から脱して通常の生活に戻る唯一の方法が、ワクチン接種なのだ。最近では、ワクチン・パスポートを条件に国境を開く国も出始めており、ワクチン接種の証明がなければ旅行することも難しくなるだろう」
さらに必要な啓発活動

 しかし、社説によれば、ジョホール州では1万4144人、ケダ州では1万1000人、ケランタン州では1万人がワクチン接種の会場に現れず、その多くが60歳以上だという。また、
 接種会場に来なかった理由としては、接種の準備ができていない、気分がすぐれない、隔離期間中である、指定地域外にいて行けなかった、接種会場への交通手段がなかった、直前に予定を変える必要があった、などが挙げられているというが、高齢者の中には、子どもたちに登録されたものの本人が行きたくなかったという者も少なくない。
 「登録者数の少なさと、実際に接種を受けなかった人の多さをみれば、ワクチン接種の重要性に関する啓発活動に力を入れる必要があることは明らかだ。そのためには、政府の努力が必要だ。政府は、国民に十分なワクチンを入手することができたが、今度は、より迅速な接種をすることが求められている」
 社説によれば、これまでに1179万人がワクチン接種の登録をしたが、そのうち実際にワクチンを受けたのは279万人余り。SNSでは「こんなに遅いのなら登録した意味がない」という声が上がっているという。社説によれば、政府はいら立つ国民感情を理解しており、ワクチン接種の大規模会場を開設すると同時に、移動会場も設けるとしている。また、民間医療施設の活用も検討しているという。
 マレーシアは、2021年末までにワクチン接種率80%を達成し、集団免疫を獲得することを目指している。そのためには、2600万人がワクチンを受ける必要がある。「もう永久にロックダウンをしないですむように、ワクチン接種を進めよう」と、社説は呼びかけている。
 
(原文:https://www.thestar.com.my/opinion/columnists/the-star-says/2021/05/30/now-more-than-ever-vaccination-is-vital)

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