「コロナ禍、公務員の給料をカットせよ」
スリランカの社説が日払い労働者への支援を提言

  • 2021/8/28

 新型コロナの感染拡大が止まらないスリランカは、世界の多くの国と同様、これまでで最悪の感染状況になっている。そうした中、スリランカの英字紙デイリーニューズは、8月23日付の社説で深刻な影響を受けた人々への経済支援について論じた。

(c) Jalitha Hewage / Unsplash

公平な負担を
 社説によれば、スリランカの観光航空大臣は大統領に対して、「公務員の給料をカットし、新型コロナによる経済活動制限で影響を受けた日払い労働者への支援に充てるべきだ」と提言したという。
 「一般的に為政者は公務員の給料カットに消極的だが、大臣がこのような提言をした理由は明白だ。もし、給料受給者たちが新型コロナ予防策の活動制限によって負の影響を受けていないなら、ステイホームの状況に喝采するだろう。もちろん、感染予防はステイホームの正当な理由であり、政府は社会の利益のためにこのような行動制限を実施する必要がある。しかし、そのために一部の国民だけにしわ寄せがいくことになってはいけない」
 ステイホームで在宅勤務となった公務員が以前と変わらない給料を受け取り、生活が保障されている現状は、新型コロナによって多大な経済的損失を被った職種の国民から見れば不公平だ、という主張だ。
 社説はさらに、政府の対策についてこう記す。
 「オーストラリアやドイツ、英国など、裕福な国でもロックダウンへの反発は見られたが、わが国では、ロックダウン自体への反発ではなく、コロナ禍における給料や労働環境への不満が出ている。日払いの労働者たちは、どんなに深刻な影響を受けても活動制限に協力している。にもかかわらず、政府がこのほど発表した彼らへの支援は、安定した給料を得ている公務員との格差を埋めるほどではない」

コロナ禍の新たな格差

 さらに社説は、「こうした不満を抱く人々は、最貧層だけではない」と述べ、中間層の中にも、自営業や技術職で収入や雇用環境が不安定な人々がいると指摘する。
 「政情不安を引き起こす要因は、なにも収入が少ないということにとどまらない。社会の一部が、他の犠牲の上に成り立っていることへの不満こそが政情不安につながると社会学者は指摘している」
 コロナ禍によって、給与所得者である公務員と、雇用主や顧客の要望に合わせて働く人々の間に格差が生まれることは、社会の仕組み上、やむを得ない、と社説は指摘する。しかし、同時に、「そんなことは負担を負わされた側には何の慰めにもならない」と指摘し、「簡単なことではないが、強い指導力による政治的介入が必要だ」と訴える。
 社説によれば、観光航空大臣は民間企業の給与カットも提言しているという。民間セクターの中には、生産性の低下などの影響を受けた企業もあるが、逆にコロナ禍で需要が高まり、より高い利益を上げている会社もある。社説は、「民間企業の多くはコロナ禍で給料システムの改革に着手している。引き続き見直しを進めてほしい」と訴える。
 コロナ禍で生まれた経済格差によって、これまでの社会システムにはなかった新たな格差が生まれているのは事実だ。一向に収束の気配がみえない新型コロナの感染拡大の中で、これまでとは違う視点に立った対策が求められている。

 

(原文http://www.dailynews.lk/2021/08/23/editorial/257329/daily-wages-and-great-covid-divide)

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