「賃上げ」公約めぐり舵取り迫られるタイ新政権
労働者と経営者で割れる世論
- 2019/8/5
5年ぶりの民政復帰
タイのプラユット首相が率いる内閣が7月16日、ようやく発足した。2014年5月のクーデター以来続いていた軍事政権にピリオドが打たれ、5年ぶりの民政復帰となった。とはいえ、プラユット首相はじめ閣僚の多くが留任するため、軍の影響力は維持される。
引き上げめぐり割れる世論
新政権発足から2日後のバンコクポスト社説では、プラユット首相の与党である「国民国家の力党(PPRP)」が選挙の公約として掲げた「1日の最低賃金を引き上げる」という政策を採り上げた。PPRPは、現在のところ1日あたり308~330バーツである最低賃金を30%引き上げ、400~425バーツにすることを公約にしていた。
これを踏まえ、社説は、「最低賃金を400バーツに引き上げることは、PPRPが3月24日に実施された総選挙の選挙戦で有権者の関心を引くために掲げていた公約であり、多くの労働者たちは今、その実施を求めている」と指摘。その上で、かたずをのんで行方を見守っている人々の存在に触れ、「彼らは、最低賃金が引き上げられることによって生活費や物価が上がり、国の競争力が削がれるなど、多くの悪影響が出ることを懸念している」との見方を示す。