鉄壁の感染対策脅かすベトナムの密入国問題
新型コロナの国産ワクチン開発進む
- 2021/1/28
諸外国への提供も視野に?
一方、12月17日には初の国産新型コロナワクチンとなる「ナノコバックス」のヒトへの臨床実験が始まった。治験第一号に名乗りを挙げたのが現役の女子医大生ということもあり、VNエクスプレスは12月10日付記事でこのニュースをセンセーショナルに報じた。第一段階の治験が終われば、2月中旬にも第二段階へと移行する予定だ。また、別の研究機関が開発を進めているワクチンも早ければ今月から第一段階の治験に入ることが見込まれている上、さらに別の2機関もそれぞれワクチンの開発に取り組んでおり、順調に進めばベトナムだけで4種類の国産ワクチンが誕生することになる。
感染の抑え込みにこれほど成功している国で、なぜ複数の国産ワクチンの開発が行われているのだろうか。
これは私見だが、海外からの供給に全てを委ねるわけにいかない事情と、ワクチンで国際貢献を行いたいという思惑があるためではないかと考える。ベトナム政府は、英企業のアストラゼネカとオックスフォード大が開発しているワクチンの供給量を3000万回分求めて折衝中である。このほか、米ファイザーや露スプートニクV、さらに中国からも購入を検討しているものの、ワクチンをめぐる各国の駆け引きは激しさを増しているため、国内開発を進めることでリスクヘッジが見込めるはずだ。
また、国連が12月27日を「国際エピデミック対策デー」に定め、エピデミック(感染症の流行)の予防と対策、協力と協働の重要性を訴える決議を行った際、ベトナムのフック首相が「全世界が入手可能(affordable)なコロナワクチンを供給し続ける必要性がある」というメッセージを寄せたとVNエクスプレスは同日付記事で伝えており、注目される。首相は、ベトナム産ワクチンが承認された後、諸外国に提供することも検討しているのではないだろうか。
国内での感染拡大が懸念されるかたわらで、ワクチンの開発へとシフトするベトナム。今後もコロナをめぐる同国の動きに注視したい。