「プラユット首相は慢性的な問題解決に向け行動を」
タイで長引く反政府運動を受け地元英字紙が対策を訴え

  • 2022/2/9

 タイで再びプラユット政権を揺るがす人々の運動が起きている。2022年1月22日の地元英字紙バンコクポストは、この問題を社説で採り上げた。

タイの首都バンコクで不敬罪の廃止を訴え抗議行動を行う市民ら(2021年12月12日撮影) (c) AFP/アフロ

機能不全に陥った政権

 タイのプラユット政権は、コロナ禍以前から、政治改革と王室改革を求める反政権運動にさらされている。コロナ対策についても不満は募り、その動きは感染拡大下でもおさまっていない。バンコクポスト紙によれば、今回の反プラユット政権の動きは、市民運動家たちによる連携行動だという。

 「プラユット政権が対処できていない土地問題や森林をめぐるトラブルの課題を浮き彫りにする抗議行動が、新たに始まった。社会のための人々のネットワーク(P-Move)は1月20日、バンコクの路上で抗議行動を行い、この国の問題解決機能がいかに不全に陥っているかを内外に示した」

 社説によれば、P-Moveはバンコクにある国連の建物から首相府に向かってデモ行進を行い、プラユット政権に圧力をかけたという。P-Moveとは市民運動家や学者たちの団体であり、公的機関との土地問題や、先祖伝来の土地をめぐる権利侵害の問題、少数民族の権利に関する問題などを扱っている。特に、カンクラチャン国立公園内のバンクロイカレン村民の権利侵害をめぐって大きな声を上げている。

 社説によれば、プラユット首相は以前、副首相をこの問題の担当に任命。対するネットワーク側も、問題の解決に向け期待は大きかった。さらに、市民グループとの交渉役には農林水産省副大臣が選ばれたが、副大臣が首相と対立して退任すると、市民グループとの間でそれまで話し合われ、まとまっていた合意が立ち消えになってしまったという。

古めかしい官僚制度を捨てて

 さらに社説は、「プラユット氏が2014年に政権トップに着任して以来、国内の土地問題は悪化しており、投獄された村人たちもいる。P-Moveは、プラユット首相の約束が単なる時間稼ぎに過ぎず、リップサービスをしているだけだと批判している。P-Moveが求めているのは、この問題に関わるすべての閣僚が参加する国家レベルの委員会の新設だ」と、指摘した上で、「こうしたP-Moveの運動が、与党内の不和によって揺らいでいるプラユット政権に対してさらなる打撃を与える可能性がある」との見方を示す。プラユット政権は、生活コストの高騰や経済的な課題に直面しているという。

 社説は、「最近行われた補欠選挙で与党が敗北したことからも分かるように、プラユット氏の人気は急落している。プラユット氏は下部組織や政府系団体に次々に仕事を回すのではなく、一国のリーダーとして、古臭い官僚システムでは解決できない問題があることを認識すべきだ」と訴えた上で、プラユット首相に対し、市民団体や学者たちの力を借りて問題解決に当たるべきだ、と呼びかける。

 「心地よい場所から一歩踏み出し、国家の慢性的な問題を解決する手法を探し求めることが必要だ。しかし何よりもまず、プラユット首相自身が、この問題を解決するのだという政治的意思を見せなければならない」

 

 (原文https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2251551/pm-needs-to-be-proactive)

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