中国がアフリカと「一帯一路」共同建設に合意
現実味を帯びる「チャイナフリカ」の時代

  • 2020/12/21

 中国新華社によると、中国の国家発展改革委員会の何立峰主任はこのほど、アフリカ連合(AU)委員会のムーサ・ファキ委員長と「中華人民共和国政府とアフリカ連合の『一帯一路』建設の共同推進に関する協力計画」に調印した。政策の意思疎通、インフラ施設の連結、貿易の円滑化、資金の調達、国民の相互交流や相互信頼などの分野を中心に協力内容と重点プロジェクトが明確化され、タイムスケジュールやロードマップが提出されている。これまでに138カ国、31の国際機関と202件に上る「一帯一路」建設の協力文書に調印している中国だが、今回は地域機関との初の締結という意味で、中国側の期待は特に大きい。

2019年4月に開かれた一帯一路の国際会議で握手を交わす中国の習近平首席主席(右)とアビィ・アハメド・エチオピア首相(2019年4月27日北京で撮影)(c)新華社/アフロ

シンクロする「大中華思想」と「パン・アフリカ主義」

 このほど調印された「協力計画」について、新華社は「アジェンダ2063」を掲げるAUと「一帯一路」を掲げる中国が、今後、相互に補完し合い、グローバル課題に共に取り組み、質の高い発展を遂げながら新たな機会を創出していく後押しになるだろう、と伝えている。新華社の表現はいささか分かりづらく、ピンとこないかもしれないが、要は、アフリカ大陸の住民や、世界中に散らばったアフリカ系住民の解放と連帯を訴える「パン・アフリカ主義」と、中国こそが世界の中心だとする「大中華思想」をリンクさせるという思想だと言えよう。

 「アジェンダ2063」とは、包摂的成長と持続的開発に基づくアフリカの繁栄などを含んだ、2063年までのアフリカの政治、経済、社会に関する長期的ビジョンである。2015年1月のAU首脳会合で合意した。今回の調印は、その最大のテーマであるアフリカの統合を、中国が「一帯一路」を通じて支援していくことを明確に打ち出したことを意味する。人口規模の大きさの面でも、資源の豊かさの面でも、大きなポテンシャルを有するアフリカ社会。ポストコロナの新しい国際社会において、少なからず影響力を持つと言われているこの地域が、今後、全体主義・権威主義志向の中華陣営に入るのか、それとも西側の開かれた民主主義・自由主義陣営に入るのかが注目を集める中、中国側が自分たちの側に取り込もうと本気を出したことが、今回の締結につながった。

 この点については、日本をはじめ、西側陣営の見込み違いが否めない。日本が主導して1993年以降、4年に1度、アフリカ開発会議(TICAD)を開催し、さまざまな開発支援を展開してきたことが、アフリカの中国依存を食い止め西側陣営に留める上で大きな役割を果たしたと考えている人は多い。だが、実際には、「アジェンダ2063」で謳われているパン・アフリカ主義やアフリカ統合に関する思想は、TICADが掲げる「持続可能な開発」よりも、中国の一帯一路政策と親和性が高い。

 実際、TICADでは、質の高いインフラ支援も打ち出されているとはいえ、優先的に挙げられているのは農業や畜産の振興、中小企業支援をはじめとした民間セクター開発、公衆衛生、テロや過激主義への対策や危機管理、環境対策や貧困削減、教育や職業訓練、雇用促進を通じた社会の安定化であり、あくまで庶民の生活向上が前面に掲げられている。

 しかし、「アジェンダ2063」が旗艦プロジェクトとして華々しくぶち上げるのは、庶民が日々直面している課題の解決より、大陸内高速鉄道ネットワークや、バーチャル大学やE大学、大陸内パスポートフリー化、宇宙開発、大陸内国家間金融機関の設立、サイバーセキュリティーなどである。いかにも大風呂敷を好む中華思想的な思想だと言えよう。

「ワクチン外交」めぐる駆け引き

 歴史を紐解くと、アフリカの社会主義の起源は、中国の毛沢東時代に輸出された革命思想に遡る。鄧小平時代になってからも、中国は「内政不干渉」という建前の下、アフリカ諸国で横行する暴力主義や腐敗を取り立てて問題視することなく支援を続けた。西側諸国のように人権や非暴力、民主主義を口うるさく要求しない中国は、部族主義的な政治に起因する暴力性や階級主義、腐敗などの問題を抱えるアフリカにとって都合がいい。

 もっとも、近年は、こうした大風呂敷を広げるような支援によってアフリカが「債務の罠」に陥るリスクも大きいということも、皆、少しずつではあるが気付き始めている。

 例えば、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェス事務局長がかなり中国寄りなのは、アジスアベバに建設されたアフリカ疾病予防管理センターをはじめ、祖国エチオピアが中国から多額の支援を受けているためではないかという疑惑が強まりつつある。今回の一帯一路共同推進協力計画の調印によって、こうしたアフリカ勢のあからさまな中国支持は、今後、ますます加速すると見られている。

一帯一路計画にのせて「ワクチン外交」を展開しようとしている中国の思惑を警戒する声が相次いでいる (c)Nataliya Vaitkevich / Pexels

 とりわけ西側諸国が強く懸念しているのが、いまだ収束の兆しが見られないコロナ禍の中、中国が一帯一路計画にのせて「ワクチン外交」を展開し、アフリカの取り込みに攻勢をかけていることである。英国や米国をはじめ、先進国で開発されているワクチンは、マイナス70度からマイナス20度といった厳しい温度管理が必要で、アフリカの人々には、到底いきわたることのない高価なものだ。他方、中国が間もなく完成させようとしている不活化ワクチンは2~8度でも管理でき、途上国でも扱いやすいと言われている。中国は、全世界が公平にワクチンにアクセスできるよう保証するためにWHOがGAVIワクチンアライアンスや感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)などと連携して立ちあげた国際枠組み「COVAX」に参加しているが、習近平国家主席は「中国がワクチン開発に成功した暁には世界の公共産品としたい。特にアフリカをはじめ、途上国に優先的に届けたい」と繰り返し明言している。わざわざ「アフリカ」と言及していること、そしてテドロスWHO事務局長が中国の言いなりであることを考えれば、中国製ワクチンが優先的にアフリカに供給されることは、ほぼ間違いない。

 中国とアフリカ関係の第一人者である米ジョンズ・ホプキンス大学のデボラ・ブローティガム教授は、ドイツの国際放送ドイチェ・ベレの取材に答えて「初めて市場に出すワクチンは数に限りがあるため、中国はその優先順序を自分の都合で決めるべきではない」とコメントしていたが、これも、アフリカに狙いを定めてワクチン外交を展開しようとしている中国を牽制してのことだろう。

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