日越の相互往来が再開 進出企業人ら440人がベトナムに復帰
市民の経済活動は復活も、観光産業は回復の目途立たず

  • 2020/7/17

”日常に戻りたい”と思い続けた14日間 新しいビジネス展開を模索 

 6月26日、久しぶりに足を運んだ成田空港は閑散としており、出発便を知らせるボードも軒並み「欠航」を告げていた。チェックインカウンターの前には、むこう14日間を共にする人たちが並ぶ。この時点で滞在先の部屋番号が示されたタグが荷物に付けられ、手渡された防護服を搭乗ゲート前で見に着けるなど、普段の登場手続きとは何もかも異なっていた。

チェックインカウンターで渡された防護キット。不織布の素材の防護服は、毛布が配られなかった機内で体温調節にちょうどよかったという(筆者提供)

 機内では1席おきに座った。客室乗務員も防護服を着用し、機内サービスは最低限に抑えられている。出発の24時間前に電子医療申告を行うことが義務付けられていたため、ベトナムに着陸した後は、保健省の係官による内容確認と体温チェックがスムーズに行われ、ホテルに移動した。事前に搭乗予定者向けにzoomで説明会が行われ、一連の手順は分かっていたし、心構えもできていたつもりだったが、消毒液でびしょ濡れになった自分の荷物を見た時は、さすがに少し気が滅入った、と田中さんは振り返る。

空港から隔離先のホテルにマイクロバスで移動し、防護服を着たままチェックインを行った。車内が最も”密”だったとのこと(筆者提供)

 バンドンの滞在先は、いわゆる5つ星級のリゾートホテルで、主に日本人と韓国人の隔離対象者向けの施設となっていた。部屋から一歩も出られないのは辛かったが、バルコニーから見える景色と、窓から吹き込む海風で気を紛せた。毎日、定時に部屋の前に食事がおかれ、食べ終わると部屋の外に食器を置く。味は悪くないものの、量が多く、最初の数日間は食べきれなかった。その後、他の滞在者からも要望があったのか、一食あたりの量が減らされた。隔離期間中もリモートワークを続けていたが、スタッフとオンラインで来年の事業計画を練ったり、現場の状況報告を受けたりするたび、「早く日常に戻りたい」との思いが募った。2週間後に行われた2回のPCR検査は全員陰性。バンドンからは週3便しかホーチミン行きが飛んでいないため、田中さんは車で近隣の空港に移動し、ようやくホーチミンに戻ることができた。

隔離中の食事は汁物やデザート付きでボリューム満点。田中さんは体調管理のため後半は夕食抜きにしたそうだ(筆者提供)

 

 コロナ禍を受け、日本ではオンライン視聴のニーズが高まったり、お取り寄せによるネット購入が急増したりと消費の多様化を受けて内需が見直されている上、GOTOキャンペーンのような政府主導の支援策が進められるなど、国内旅行や地域に根差した消費活動にも商機が期待されている。田中さんは、「残念ながらベトナムでは政府主導でキャンペーンが展開されることはないだろう」としながらも、これまで年単位で進めていた事業計画を3カ月ごとに見直したり、従来の日本向け事業に加えてベトナム国内向けの営業にも力を入れたりするなど、より戦術的な経営を考えているそうだ。

”ホーチミンの銀座”ドンコイ通りはいつ賑わいが戻る?

 7月上旬、ホーチミン市中心部のドンコイ通りは、人もまばらで車の流れもスムーズだった。「ホーチミンの銀座」と呼ばれ、以前は国内外からの観光客で賑わっていたエリアだが、コロナによって様相が一変した。

7月上旬のドンコイ通りの様子。普段なら車やバイクが多数行き交う「ホーチミンの銀座」だが、かなり空いていた(筆者撮影)

 観光産業は、厳しい経営を強いられている。その影響だろう、在住者向けにプロモーションを実施しているホテルも多く、普段なら1泊200ドル近くするところも、半額で泊まれたりする。海外に自由に行けない機会だからと、筆者も先日、プロモーションを利用して1泊だけ「非日常」を味わってきた。時々、バイクで素通りしていたが、改めて散策してみると、人の往来の少なさに驚かされた。空店舗も目につく。

在留者向けにキャンペーンを打ち出しているホーチミン市内の高級ホテルのレストランの様子(筆者撮影)

 その一方で、以前から地元で人気だった飲食店は賑わいを取り戻しつつあり、その差は明らかだ。降り出した雨を避けながら、ホテルに戻った。朝食会場のレストランには、ベトナム人ファミリーや友だちグループらがテーブル席の3分の1ほどを埋めており、外国人は筆者を入れて数組足らず。市内には手頃なホテルも数多くあるにも関わらず、こうして高級ホテルに泊まる経済的余裕のある人が増えているのを感じ、ベトナム人消費者のパワーに頼もしさを感じた。どれだけ貢献できるか分からないが、渡航制限が解け、外国人観光客が再び戻ってくるまでは、彼らをターゲットにしていたホテルや飲食店をできる範囲で筆者も応援したいと思っている。

 

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