バングラデシュ女性の家事負担を考える
地元の社説が無報酬の労働の再評価を呼びかけ

  • 2021/5/12

日本ではコロナ禍で女性の自殺が増えているという報道があったが、他の国でも新型コロナウイルスの感染拡大によって仕事と家事の両方を担う女性への負担は確実に増大している。4月26日付のバングラデシュの英字紙デイリースターは、社説でこの問題を採り上げた。

(c) Karolina Grabowska / Pexels

コロナ禍で負担が増大

 社説によると、バングラデシュでは、家事の78%は女性が担っているという。ジャハンギルナガル大学が調査を実施した。さらに同調査では、新型コロナの感染拡大を受けた突然の解雇や、家で過ごすことが増えた子どもたちの世話などのために女性の負担が急増していることも明らかになった。
 社説は、この「バングラデシュのコロナ禍における家事の分析」の調査によって、バングラデシュで女性がどのような経済状況に置かれているか、その実態に初めて光が当てられた、と評価する。
 同研究では、バングラデシュの都市部に住む女性が、現在、家事に費やしている時間は、コロナ禍の前と比べて128%増加しているという。以前はおよそ7割の女性が毎日約5時間を家事に費やしており、うち4割がコロナ禍によってさらにその時間が増えた、と回答したという。また、フルタイムで働いている女性の85%も4時間以上を家事に費やしている。こうした結果を受け、社説は「男性がいまだに家事に参加していない表れだ」と指摘する。

家族の理解と教育へのアクセスが重要

 さらに社説は、過去の記事を引用しながら次のように指摘する。
 「2016年1月18日付デイリースターの紙面によれば、男性が家事に費やす時間が1日平均1.2時間と、女性に比べて5.25時間も少ない。男性はこの時間をレクリエーションや自分のキャリアアップのために費やすことができるのだ」
 また、こうした女性による家事労働が無報酬であると社説は強調する。
 「こうした無報酬の仕事がいかに経済的に重要であるか、認識すべきだ。女性の家事がGDPに換算されればバングラデシュの経済は大きく成長する、と指摘する経済学者もいる」
 こうした考え方をふまえ、「政府はもっと女性に焦点を当てた支援をすべきだ」と、社説は主張する。
 「政府はコロナ禍で経済的な苦境に陥っている女性たちに支援の手を差し伸べるべきだ。現金や食料支援をすみやかに届けるとともに、家事が女性だけのものではなく、男性も同様に担うべきだという啓発キャンペーンを展開しなければならない」
 その上で、「最も大切なのは、女性たちが男性と同様に教育にアクセスできること」だと訴える。
 「女性を経済的にエンパワメントするためには、必要なリソースへのアクセス―たとえば、職業訓練プログラムや自分の夢を実現するために必要な教育―に対する家族の理解とサポートが不可欠だ」
 報酬がない家事や子育て。コロナ以前も盛んに指摘されていたことだが、コロナ禍になって改めて多くの人が家庭内の仕事の意味に気づかされたのではないだろうか。 

 

(原文:https://www.thedailystar.net/editorial/news/womens-unpaid-care-work-must-be-counted-2083685)

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