深刻化する気候変動に高まる危機感
アジア各紙が生活を守るための対策を訴え

  • 2022/7/10

 日本にも暑い季節がやってきた。史上最短で梅雨が明け、40度に達する猛暑日が6月の段階で何日も続く。湿度の高さを合わせれば、不快指数は熱帯の東南アジア諸国よりも高いだろう。気候変動を体感する日々だが、アジアの国々では気候変動への対策がないまま、自然破壊が進むことに危機感を示す社説が相次いだ。

(c) Markus Spiske /pexels

自然災害で住居や仕事を失う人々

 ネパールの英字紙カトマンドゥ・ポスト紙は、採石場に関する法案が「改悪された」という社説を掲載した。
 同国ではこのほど、採石場に建設される砕石工場について、森林や、人が住んでいる場所、河川、高速道路、宗教的文化的施設などから200メートル以上離すことを義務化した。しかし、この決定について、社説は「以前は500メートル以上とされていたのに、規定が“改悪された」「採石業者にすり寄った決定だ」と批判し、次のように述べる。
 「ネパールの為政者たちは、次から次へと気候変動対策に逆行する政策を打ち出し、悲劇を招く。ジャングルが侵食され、河川が食い物にされ、あらゆる自然資源が破壊されるのだ」
 さらに社説は、こうした施策によって生まれる「気候変動難民」についても言及する。気候変動難民とは、干ばつや洪水など、気候変動に起因する自然災害で住居や仕事を失った人々のことを指す。社説は世界銀行の2018年報告を引用して「2050年までに気候変動難民が1億4000万人に上ると見られている」と伝え、懸念を示した。

異常な高温で失われる森林

 フィリピンの英字紙フィリピンデイリーインクワイアラーは、6月26日付の社説で、国内有数の避暑地であるバギオで森林が失われていることに警告を発した。
 バギオはフィリピン北部にある避暑地で、同国では珍しく美しい松林があることで知られる。しかし社説は、バギオで5月に「異常な高温」を記録したと伝え、森林がどんどん失われていることが原因の一つだ、との見方を示す。
 NGOのグローバルフォレストウォッチによれば、2001年から2021年の20年の間に、バギオでは40ヘクタールに上る森林が失われたという。さらに社説は、世界保健機関(WHO)が8年前の報告書で「フィリピンの中で最も空気汚染が進む都市がバギオだ」と記載されていると言及する。
社説は、フィリピン政府が、樹齢50年以上の樹木の伐採を禁じるなど森林保全のために取り組んでいると評価した上で、「伐採を禁じるだけでなく、植林を進めなければならない」と訴える。さらに、「地球温暖化対策のためには、化石燃料による二酸化炭素の排出を抑制し、クリーンエネルギーに転換することが最も効果的だと言われている。森林には、二酸化炭素を吸収する機能があり、その保全は重要だ」と主張し、次のように訴えた。
 「だからこそ、木の伐採をやめ、植林をしなければならない。木々はただ環境を美しくするだけではない。生命を支えているのだ」

被災状況にも貧富の格差

 このほかにも、雨季の訪れとともに台風の季節がやってきた国々で、洪水対策や被災者への支援の必要性を訴える社説が掲載された。
 バングラデシュの英字紙デイリースターは6月26日付の社説で、自然災害により最も深刻な被害を受けるのは貧困層だと指摘した。洪水被害に関する調査によれば、何らかの被害を受けた世帯は、全体で見れば56.4%だが、貧困世帯については97.17%が被害があったと回答したという。その一方で、富裕層の中で被害を受けたのはわずか9%にとどまっており、被災状況にも深刻な格差があることを改めて浮き彫りにした。

 

(原文)
ネパール:https://kathmandupost.com/editorial/2022/06/21/closer-to-disaster

フィリピン:https://opinion.inquirer.net/154416/stop-cutting-trees

バングラデシュ:https://www.thedailystar.net/views/editorial/news/time-prepare-rising-losses-natural-disasters-3053036

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