「ミャンマー軍部は支配の正統性を持たない」
独立系メディア・エーヤワディーが国際社会の関与を訴え

  • 2021/9/2

 ミャンマーで軍部がクーデターにより実権を握って9月1日で7カ月が経過した。軍の弾圧を逃れ、タイ・チェンマイで発行されている「エーヤワディー・ニュース・マガジン」の8月2日付社説を紹介する。

(c) The Irrawaddy English Edition / Facebook

国内をコントロールできない軍部

 ミャンマーでは1988年にも全国規模の民主化運動が広がり、その後、軍部がクーデターにより実権を握った。社説は、かつての国軍による支配を、現在と次のように比較する。
 「1988年当時、軍部は全国的な民主化運動を制圧し、流血の弾圧を行って国内を統治した。2021年2月に起きた軍事クーデターからも、半年余りが経過した。軍部は “国家行政評議会” (SAC)を名乗っているが、いまだ国内を支配下に置くことはできていない。反対勢力はいまだ不動の強さを持っている」
 1988年、当時の指導者だったソウマウン、タンシュエ、ティンウー、キンニュンの各将軍は、実権を握った数週間後に「国家法秩序回復評議会」(The State Law and Order Restoration Council :SLORC)を立ち上げ、統治を開始した。社説は、「現在のミン・アウン・フライン総司令官と同様に、彼らも残虐で残忍な人々であったが、彼らは少なくとも勢力を統合し、国を支配することができた。当時、数カ月後には公務員は職場に戻り、民主運動家は逃げて隠れるか、刑務所に拘束されるかのどちらかによっていなくなり、反対運動は路上から消えた。また、地方の司令官たちがそれぞれの場所を効果的に治め、秩序を維持した結果、1990年代の前半には外国投資を呼び込む自由経済に踏み切ることができたのだ」と振り返る。もちろん、必ずしもかつての軍事政権を称賛する意図ではないだろう。むしろ、現状に絶望するあまりの論調だと言える。

「失敗国家」への道

 「2021年の今、ミャンマーは失敗国家になるかどうかの瀬戸際に立っている。国民は明らかに軍政時代に戻りたくないと考えているうえ、軍部自身には国内を統治する力も影響力もない。軍部はいまや野蛮人のようにふるまっている。公務員たちはそんな軍部のために働くことを拒み不服従運動(CDM)を続けている。民間銀行は再開すらされていない。外国企業はほとんどがミャンマーを去った」
 世界銀行の報告によると、2021年第4四半期のミャンマー経済は、前年比で18%低下すると予測されている。その背景として、社説は「政治的な混乱のみならず、新型コロナの打撃も大きい」と指摘した上で、「経済がマイナス成長となることで、国民の貧困や失職、飢餓などの問題はより深刻化し、より多くの国民が近隣国へと移住したいと希望するだろう」と述べる。
 「ミャンマーの今日の姿を見れば、この国の行く末に危機が迫っているのは明らかだ。厳しい経済低迷、社会的、政治的な危機は、1948年の独立以来の深刻さになるだろう。軍部によるクーデターは国を壊滅させる行為だ。実際、東部のシャン州では、違法薬物の取引や生産が促進されているという」
 さらに懸念されるのが、少数民族の支配地域だ。社説によれば、国内各地で武力蜂起が起き、殺害や爆撃が続いている。「軍はこうした動きをコントロールできていない。こうした動きは、ここ数十年の間、落ち着いていたチン州やカヤー州でも発生している。サガインやマグウエでは、軍が駐留する場所への攻撃が相次いでいる」
 少数民族の武装組織と異なり、市民は自動小銃のような本格的な武器を持っておらず、手製の爆弾で軍に立ち向かっている。社説は「こうした反乱軍も軍部にとっては脅威だ」とした上で、「国家行政評議会(SAC)は2年以内に選挙を実施すると表明したが、現実的ではない。ミャンマーの苦難は続く。国際社会の関与が必要だ」と訴える。
 国際社会では、今、アフガニスタンに報道が集中しているが、ミャンマーでは今も国民が抵抗を続けている。目をそらしてはいけない。

 

(原文https://www.irrawaddy.com/opinion/editorial/myanmars-military-regime-lacks-legitimacy-and-capacity-to-govern.html)

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