厳しく問われる建設許可の実態
~シアヌークビルのビル崩壊事故

  • 2019/7/16

残された疑惑と課題

 シアヌークビルの事故でカンボジアは、誤った理由で有名になってしまった。州知事が辞任したところで、それは遅すぎる。そしてさらに悪いことに政府は、「職務怠慢」の責任を取って辞任したこの人物を昇格させたーーしかも、事故現場のがれきさえ片付いていないような時期に。

 このような決断は、投資家たちに、そしてもっと重要なことは国民全体、有権者たちに、いったいどのように見えるだろう。職務を遂行せずに懲罰を受けた公務員が、政府内で昇格する。事実なのか、と耳を疑う。有能な政府と首相が、このようなことをどうして公に発表したりできるのだろうか?

 犠牲者28人というだけでももちろん最悪の事態であるが、このビルがもしもっと高層だったら、あるいはもし完成後の使用中に事故が起きたら。結果は想像を超える恐ろしさだ。

 1986年にシンガポールで起きたホテルニューワールドの倒壊事故についての調査委員会報告には、参考にすべき点が多い。(※地上6階建てのホテルが構造の欠陥により、深夜1分もかからずに倒壊。33人が死亡した)調査委員会は、このような事故を防ぐためには、建築業界に政府がもっと積極的な役割を果たす必要がある、と指摘している。その方法としては、より頻繁な建物の抜き打ち検査や、5年おきのメンテナンスチェックを法律で義務化することなどが挙げられた。そして改正された法律では、ビルの所有者に対し、建築計画のより厳しい見直し、建築資材のテスト、架構工事の監督、資格を持つ製図者、建築家、エンジニアの採用などを求めている。

 別の5階建てのビルが、適切な建築許可がないまま工事が進んでいる、という事実は恐ろしい。ぜい弱な構造が引き起こす惨事は想像を超えるものになるだろう。

(原文:https://www.khmertimeskh.com/50619465/scrutinising-building-approvals-better-late-than-never/)

固定ページ:
1

2

関連記事

ランキング

  1. (c) 米屋こうじ バングラデシュの首都ダッカ郊外の街で迷い込んだ市場の風景。明るいライトで照…
  2. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  3.  ミャンマーで2021年2月にクーデターが発生して丸3年が経過しました。今も全土で数多くの戦闘が行わ…
  4.  2024年1月13日に行われた台湾総統選では、与党民進党の頼清徳候補(現副総統)が得票率40%で当…
  5.  台湾で2024年1月13日に総統選挙が行われ、親米派である蔡英文路線の継承を掲げる頼清徳氏(民進党…

ピックアップ記事

  1. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  2. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  3.  フィリピン中部、ボホール島。自然豊かなリゾート地として注目を集めるこの島に、『バビタの家』という看…
ページ上部へ戻る