アフリカに輸入される中古電子製品の光と影
グローバル大企業と連携するケニアの廃棄物処理センター

  • 2021/12/27

 いまや、アフリカでも首都なら最新の電化製品を簡単に入手できる。大型ショッピングセンターに行けばビジネスマンが最新のiPhoneを使いこなしているし、有名どころのスタートアップ企業には、カスタマイズしたコンピューターを駆使するエンジニアもいる。その一方で、庶民はもっぱら先進国から輸入される手ごろな価格の中古製品に頼ることが多く、ダウンタウンを歩けばまだまだ現役で使える型落ち製品の数々が陳列されている。こうした中古製品は需要があり、ヨーロッパ諸国やアメリカからアフリカ各地へと大量に輸入されているが、近年は不十分な処理体制や法規制による弊害が懸念されている。

同社廃棄物センターの溶接場の様子(筆者撮影)

深刻化する電気電子機器廃棄物の弊害

 中古家電や電話機などの廃棄物が問題視されたのは、有害物質が含まれる電気製品を途上国向けに輸出することによる環境悪化が注目されるようになった1970年代から1980年代にかけてのことだ。こうした電気電子機器廃棄物(Waste Electrical and Electronic Equipment:WEEE)は、技術発展の速度と比例するように世界中にあふれ出し、その後、データ通信産業で起こった急速な「情報革命」が状況に拍車をかけることとなった。

 WEEEは、環境への悪影響もさることながら、人体への健康被害が懸念されている。製造元の先進国では、回収や処理に関する設備や規制が法令によって比較的整えられている一方、輸入元である途上国では未整備な場合が多い。インフォーマルセクターに従事する住民が生計を立てるために身の危険も顧みずゴミ山に分け入り、WEEEを回収して健康を害するケースも少なくない。こうした中古製品は、需要が高いからこそ輸入が増える一方で、無造作に投棄されて環境と人々の健康を害するという悪循環は根強く、断ち切ることは容易ではない。

コンピュータースクールから始まった挑戦

 喫緊の対応が迫られるWEEE問題だが、中にはリスクの深刻さを認識し、状況を変えようと立ち上がる者も現れ始めている。ケニアで子どもたちに無料でパソコンを配布するNGOを運営しているボニー・ムビチ氏も、その一人だ。

NGO代表と廃棄物管理会社CEOを務めるトニー・ムビチ氏(筆者撮影)

 ムビチ氏は2002年に「コンピュータースクール・フォー・ケニア」という非営利団体を立ち上げ、学校に新品のパソコンを配布する活動を始めたが、新たな廃棄物問題が発生していることに気づいたという。
 「数年前に配布したコンピューターが使われなくなって学校の片隅に積み上げられていたのですが、処理方法を誰も知らなかったのです」

 そうした状況を目の当たりにしたムビチ氏は、廃棄物管理分野の新たなビジネスに取り組むことを決意し、電気・電子廃棄物センターを設立。社員をヨーロッパに派遣して研修を受けさせ、コンピューターやバッテリー、テレビなど、廃棄物の種類に応じた管理方法とリサイクルについて学ばせた後、古いコンピューターを回収して新しいコンピューターに交換する事業を開始した。また、リサイクル施設の運営にはいくつかの許可も必要だったため、センターとは別会社も設立したという。

 廃棄物センターは、省庁をはじめ、学校や病院、施設などを対象に、廃棄物の種類に応じた管理サービスを提供している。さらに、テレビやラジオ、ソーシャルメディアを通じて廃棄物を適切に処理する必要性について企業などに呼びかけながら、各家庭から廃棄される不要な電気・電子製品を回収している。中古の家電を扱うNGOと環境コンサルタントをミックスしたような業態を取りつつ、環境問題に正面から取り組んでいるのだ。

廃棄物センターの検査所で製品の状態を確認するスタッフ(筆者撮影)

 「創業から20年近くが経った今、取り引き先はアフリカ15カ国、約8000社に広がり、これまでに回収したWEEEは総計1万トン以上になります。私たちが提供する価値は、このビジネスを通じて環境を安全なものにし、収益を上げつつ雇用を生み出すことです。当社は各国の地域コミュニティーや若者たち、特にインフォーマルセクターの人々1000人以上に廃棄物の適切な回収方法を教え、専門回収員として雇用しています。回収したコンピューターは、修理して無償でケニア国内の学校に寄付しています」

顧客からパートナーへ

 また、同センターは、仏系チェーンスーパーのカルフール店内に回収ボックスを置いたり、石油企業シェルの支援を受けてソーラーパネルの回収やリサイクルを展開したりと、省庁や大企業との連携プロジェクトも次々と立ち上げている。

カルフール店内に設置されたWEEEの回収ボックス©WEEE CENTRE

 同社は、廃棄を依頼する企業や法人から料金を徴収する一方、個人には請求していない。廃棄物の適切な処理に関する知識を普及したいという目的があるためだ。CEOのボニー氏は、「私たちは、循環型経済を促進する環境に優しい企業として、回収した部品は可能な限り再利用しています。廃棄物という“原材料”に付加価値をつけ、地元企業で使えるものは地元企業に、グローバル企業で使えるものはグローバル企業に提供することで利益を得ているのです」と話す。

 驚くべきことに、同社のサポーター企業には、サファリコムやオラクル、いすゞをはじめ、世界の名だたるハイテク企業が名を連ねている。
「彼らはまず、われわれと取り引きし、顧客として取り組みを見てくれた後で、助成金やパートナー提携などの形で支援してくれるようになりました」

 そんな同社が廃棄物を再利用するプロセスを説明してくれたのは、運営責任者のウォルター・バロンゴ氏だ。

 バロンゴ氏は、「持ち込まれた機器はセンターで計量した後、すべての部品をテストしますが、テストエリアで不合格となった部品は解体場に送られます。解体された部品には、プラスチック、鉄、バッテリーといったラベルが貼られ、その後、リサイクル業者に売却されるため、無駄になるものはありません」と、話す。
 同氏によれば、地元で管理できない分は、通常、ヨーロッパに輸出しているほか、マザーボードから部品を取り出すことができるパートナー会社もあるという。また、破壊したマザーボードを利用してアート作品を制作したり、ガラス素材を粉砕して再販したりする企業もある。同社にはバッテリーの検証マシンがあるため、特性や放電レベル、充電レベルをチェックし、レベルに応じて分離し、新しいバッテリーを作るために使用している。モットーは、「できるだけ余すところなく」だ。

センターで運営責任者を務めるウォルター・バロンゴ氏(筆者撮影)

 最近は、新型コロナウィルスの影響で、多くの企業に逆風が吹いた。そうした中、同社の活動は注目を集め始めており、今年2021年は、社会企業分野で世界の開発課題に取り組む企業を支援するサンカルプ循環経済賞を受賞した。

 そんな、ボニー氏は、逆境の中でも、未来へ向けたビジョンを描いているようだ。
 「当社は、新型コロナの感染拡大を考慮し、各従業員の距離を空けるためにオフィスを増設しました。それでも顧客の中には倒産したところもあるし、電子機器の廃棄物自体が顧客の間で優先度の低いものとなりました」「だからこそ、私たちにとっては同じ価値観を持つ人たちとパートナーを組むことが大切です」と話す。

 さらに「私たちがこれまで成功してきたのは、パートナーシップがあったためです」と、振り返る。

 「私たちは、ビジョンを共有する人や企業からのパートナーシップに対し、常に門戸を開いています。私たちはアフリカ最大のWEEEの管理会社として、癌などの病気から身を守り、環境汚染を防ぐために支援しています。ケニアでは、廃棄物の安全な処理に関する意識がいまだ十分ではなく、廃棄物の管理に携わる関係者を規制する法律もないため、廃棄物を手放すことに慣れておらず、ほとんどの人々が自分の責任ではないと考えている、という文化の問題もあります。当社は人々の意識改善を通じてこの問題を解決するために、学校でWEEE管理のカリキュラムを導入することを推進しています」

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