マレーシアが入国後の隔離条件を緩和
偽造証明書の多発を受け地元英字紙が苦言
- 2022/1/28
世界各地で新型コロナのオミクロン株が猛威を振るう中、隔離期間を短縮するなど、経済や社会活動を止めないための工夫も始まっている。2022年1月16日のマレーシアの英字紙ザ・スターは、この問題を採り上げた。
新たな隔離ルール
マレーシアでは、1月下旬現在、1日あたりの新型コロナウイルスの感染者数は300人前後。昨年8月には1日あたり2万人を超えていたことを考えれば、かなり抑制されている。また、ワクチン接種もおよそ8割が必要回数の接種を済ませており、ブースター接種を終えた人も3割に上っている。
こうした状況を鑑み、マレーシア政府は1月半ば、マレーシア入国11~60日前に新型コロナに感染していた人については、ワクチン接種を完了している場合、入国後の強制隔離が不要となる方針を発表した。
「この条件に該当する人は明らかに少ないが、新型コロナによる打撃を受けた観光業界や経済界にとっては、やはり嬉しいニュースである。医療施設が発行する感染証明を、印刷、もしくは電子上で示す必要があることが重要だ。こうすることで、保健当局が感染拡大のリスクを防ぐ手段ができるからだ」と、社説は記す。
その一方で、社説は、感染拡大防止に関する措置が、さまざまな形で「破られている」ことを懸念する。例えばマレーシア国内では、「偽のワクチン接種証明書」の販売が多発し、問題になっている。また、ワクチン接種証明がないまま帰国した人たちがオミクロン株を持ち込んだケースや、自宅での隔離措置が徹底されず、家族や近親者が感染したケースもあった。
感染予防策を守らない人たち
社説は、1月初旬まで、マレーシアで100人余りだったオミクロン株の感染者は、そのほとんどが外国から持ち込まれものであり、そのほかの人たちも、外国から戻った人の濃厚接触者だったと指摘する。しかしその後もオミクロン株による感染者数は増えており、1月下旬までに601人に上った。マレーシア保健省は、感染が輸入症例かどうかは明らかにしていない。
「感染拡大を防ぐために、基本的な予防策をさらに徹底することが必要だ。虚偽の申告をしたり、偽の証明書を買ったり、隔離措置に従わなかったりすれば、感染の波は止められない。感染予防策を遵守しない自己中心的な人々や、ルール逃れを手助けしたり見逃したりする公務員には、どんな言い訳の余地もない」
社説はルール違反をする人たちを強く非難し、行政当局に対して感染拡大予防策を「恐れることなく、誰に対しても厳格に」徹底するよう訴えると同時に、国民の側にも自らのすべきことをし、規制から逃れようとしないように求めた。
「もし、前述のような不正行為をしたいという誘惑にかられたら、昨年のロックダウンがどんな様子だったか思い出してほしい。そして、そこから私たちが社会や経済をどのように回復させてきたのかも、思い出してほしい」
新型コロナの感染拡大が始まってから2年以上が経とうとしている。新たな変異株が出現し、世界中でさまざまな経験が蓄積されてきた。ただ頭を低くして待っていられる期間は過ぎた。経験と教訓、そして人間の知恵を総動員し、新型コロナとの共生に取り組まなければならない。
(原文:https://www.thestar.com.my/opinion/columnists/the-star-says/2022/01/16/its-in-our-hands-as-much-as-the-governments)