「41%減」の意味は
フィリピン、海外投資家が求めるものとは
- 2019/10/25
フィリピンへの海外直接投資が減少傾向にあるという。もっとも、ここ数年、投資額は100億ドルに届く勢いで急増しており、それが落ち着いて2016年ぐらいのレベルに戻ったという見方もある。10月21日付のフィリピンの英字紙「フィリピン・インクワイアラー」は、社説でこの問題をとりあげ、「投資家が求めるものは何か」を論じていて興味深い。
海外投資減少は世界的傾向
社説によると、フィリピンの今年7月の海外直接投資額は約5億4300万ドル。前年同期比で41%も減少したという。月ごとの海外直接投資額を見ると、5カ月連続で減少傾向にある、とも指摘する。
フィリピン中央銀行は、2019年の海外直接投資額(純流入額)が年間90億ドルだと予測している。社説によれば、この額は過去の投資額と比較して、決して低いとは言えないという。実際、2010年には、海外直接投資額が約11億ドルにとどまっていたからだ。翌2011年に20億ドルに達して以来、32億ドル、37億ドルと、毎年、順調に伸び続け、2016年には83億ドル、2017年には100億ドルに達し、2018年も98億ドルを記録した。
社説は、国連貿易開発会議(UNCTAD)が今年6月に発表した報告書を引用し、「海外直接投資が縮小傾向にあるのは世界的なトレンドだ」と指摘する。同書によれば、2018年の世界全体の海外直接投資は前年比13%減で、3年連続で減少しているという。その背景には、トランプ米大統領の保護主義的な貿易政策や、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる動きなど、世界経済の不安定さがある、と言う。
特に、社説は米トランプ政権の保護主義政策による投資額の減少を取り上げ、「フィリピンのような途上国には影響が大きい。アメリカがくしゃみをすれば、世界が風邪をひく、と言われてきた通りだ」と、指摘する。
フィリピンが「苦手」なもの
とはいえ、社説は「フィリピンが風邪をひいたというわけではない」と言う。さらに、「フィリピンの海外直接投資額は、いまだ健全なレベルにある。ただ、もっとできるはずだ。例えば、同じ東南アジア諸国のベトナムは、投資先としてフィリピンを追い抜く勢いだ。この違いは何だろうか」と、疑問を投げかける。
その上で、社説は、これまで「投資環境」として指摘されてきたいくつかの項目について、一つずつ分析する。まず、インフラ。社説は、「確かにインフラは重要に違いないが、この点で言えば、ベトナムはフィリピンよりも劣っている」と、指摘する。さらに、「投資インセンティブも大切だ」とした上で、「それが事業を誘致する“決め手”ではない」と、分析する。
では、海外投資家が、今、最も必要としていることは何か。社説はそう問いかけた上で、「答えは予測性だ」と言う。政策が安定していて、予測可能な経済体制であることが、投資家たちにとって最も重要であるからだ。「投資家たちは、政府の明確な考え方を知りたい。彼らは少なくとも次の5年から10年、いやもっとかもしれないが、長期プランを立てることができる状態でありたい。このような予測性は、現在のフィリピンの得意とするところではない。今まで得意だったことはないかもしれない」
最後に、社説は「ビジネスに関する法律や税制の整備と、透明性の高い運用、そして制度の継続性が、投資家たちに高い予測性を印象付けるのだ」とした上で、次のように述べている。「もし、ドゥテルテ政権がこうした点で改革を遂げることができれば、それはフィリピン経済にとって最大の財産を残すことになるだろう」。
(原文:https://opinion.inquirer.net/124722/41-percent-decline/)