バングラデシュの病院が臓器売買に関与か
2つの腎臓を摘出された患者の死亡事件に強まる疑念
- 2020/12/18
バングラデシュの首都ダッカにあるバンガバンドゥ・シェイク・ムジブ医科大学(BSMMU)で、患者が手術中に腎臓を2つとも摘出されて死亡する事件が起きた。遺族はすぐに病院を告訴したものの、さまざまな壁にはばまれ、告訴が受理されたのは患者が亡くなってから2年後のことだった。バングラデシュの英字紙デイリーニューズは12月1日付の社説でこの問題をとりあげ、臓器売買の可能性もあると指摘している。
告訴の受理に2年
社説によれば、事件の概要はこうだ。2018年7月、映画制作者のラフィケ・シクダさんは、55歳になる母親のラウシャン・アラさんを腎臓病の治療のためにBSMMUに入院させた。何回か検査を繰り返した後、医師はラウシャンさんの左の腎臓を摘出する治療を勧めたため、同年9月、ラウシャンさんは手術を受けた。しかし、手術後にラウシャンさんの容体が悪化。BSMMUの緊急治療室には空きベッドがなかったため、ラフィケさんが母親を別の私立病院に転院させたところ、その病院でラウシャンさんを診察した医師が驚くべきことに気づく。腎臓が2つとも摘出されていたのだ。ラウシャンさんは、その後まもなく、10月31日に死亡した。
BSMMUは、摘出する必要のない腎臓を摘出した。いや、人体に必要な臓器を摘出した以上、殺人に等しい行為だと言ってもいい。社説は、「ラウシャンさんの死に対してわれわれは大変憤っている」と、記している。
臓器摘出という事実もさることながら、この事件は告訴までに2年という歳月を要した。息子のラフィケさんは、母親の死をめぐってBSMMUの医師たちを訴えようとしたが、警察当局の協力を得られず時間がかかったという。
社説によれば、告訴にここまで時間がかかったのは、ラフィケさんがダッカ医科大学検死局から母親の検視結果をなかなか取り寄せられなかったためだという。警察は、「検視結果がなければ訴えを事件として受理しない」と主張していた。粘り強い取り組みの末、警察が事件の告発を受理したのは、ラウシャンさんが亡くなって2年後の今年11月27日。しかも、バングラデシュ人権委員会がこの問題を知り、通達を出した後のことだった。
病院ぐるみで殺人に関与か
社説は、「残念ながらこの国では、診断の過誤や不足、医療過失が原因で患者が亡くなることは珍しくない。そして、多くの場合、医師は責任を取らない」とした上で、「ラウシャンさんのケースについては、医師に犯罪的な意図があったことを示している。息子のラフィケさんが主張するように、悪意をもって計画的に腎臓を摘出した可能性がある」と、指摘する。
「私たちは、警察がすぐにこの事件の捜査を開始し、ラウシャンさんの死に関わった医師やスタッフたちを速やかに逮捕することを望む。なぜ医師が腎臓を摘出する必要があったのかを調べ、事故なのか事件なのかを明らかにした上で、彼らが臓器売買組織と関係があったかどうかも調査すべきだ。犯罪に加担した者は、法に基づき処罰されなければならない」
多くの国で臓器の売買は禁止されている。にも関わらず、最貧国では今もなお、人間の臓器を移植のために売買する事件が起きている。角膜や腎臓など、「1つあれば何とか生きることができる」ものを金のために自ら売る人は確かにいる。しかし、今回のこの事件は、臓器を売買したかどうかという問題以前に、殺人事件である可能性が高い。徹底的な捜査を求めたい。
(原文: https://www.thedailystar.net/editorial/news/the-great-man-no-more-2001717)