緑豊かな故国を守るために
マレーシア、緑化キャンペーンに寄せる思い

  • 2020/2/21

 マレーシアでは、「Visit Malaysia 2020」の観光キャンペーンに合わせて、街の緑化を推進する政策が実施されている。1月19日付けの英字紙ザ・スターは、社説でこの話題をとりあげた。「緑化」とは何なのか。一人ひとりのモラルに行きつくところが、興味深い。

緑化の実現は国民一人ひとりの意識にかかっていると社説は指摘する

緑化キャンペーンを実施

 社説によると、マレーシアの国土景観局は、国内のすべての政府関係機関に対し、敷地などに花を植えたり、植え込みや木陰をつくったりするよう通達した。観光キャンぺーンなどの一環で、緑あふれる美しい国づくりを目指すためだ、という。

 もちろん、「美化」は目的の一つであるが、社説は緑化の別の「効果」も指摘する。それは、温暖化現象で上昇した都市部の気温を下げる役割を果たすことである。これについて、社説は、「緑化によって最大8℃も気温を下げることが可能」と、している。その上で、「温暖化現象や、急速な都市化、温室効果ガス問題など、気候変動に関するさまざまな課題を考えるべき時にきている」とも指摘する。

取り組みを維持するために

 一方で、社説は緑化の難しさも指摘する。

 たとえば、維持管理が不可欠である点だ。「定期的に適切なメンテナンスをしなければ、美しさは保たれない。剪定されずに放置された植物は、にょきにょきと伸びて視界をさえぎり、交通標識や信号も見えなくしてしまうかもしれない」。社説は、こう指摘した上で、「緑化を維持するためには、技術や知識が必要になる」と、している。

 また、樹木が放置されたがゆえに、これまで数々の事故が起きていることにも触れている。枝や幹が落下して車の運転手がケガをしたり、バイクが倒木に突っ込んで運転者や同乗者が負傷したりするケースがしばしば起きているほか、2014年に発生した嵐では、樹木が根こそぎえぐられ、2人の警察官が死亡したという。社説は、「緑化をした先にこのような事故が起きないよう、担当局は良い景観を保つにとどまらず、安全性の高い維持管理をする必要がある」と、指摘している。

 そして、最後にこう締めくくる。「緑化には、関係当局が対象エリアを設けたり、施設を整備したりするだけでなく、それをどう保つかが大切であり、それは国民の心がけにかかっている。ゴミをポイ捨てしない、公共施設を使った後はきれいに掃除するといった、一人ひとりがとれる行動こそが、緑豊かなふるさとの実現と維持につながるのである」

(原文:https://www.thestar.com.my/opinion/columnists/the-star-says/2020/01/19/protecting-the-green-green-grass-of-home)

 

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