「見せかけの、穏やかな日常」
静かに結束していく市民の心

  • 2021/3/25

【編集部注】

激化する軍の武力行使によって、表立った抗議行動が行えなくなっているヤンゴン。バリケードもシュプレヒコールもなくなり、一見、穏やかさが戻ってきたように見える町の中で、人々は今なおあきらめることなく、静かに結束を深めているといいます。ここでは、そんな人々の胸の内をうかがい知ることができるFacebook投稿をご紹介します。

~ 以下、Facebook投稿より ~

写真はtwitterより。 気球の町、タウンジーのプライドを感じる抗議活動。

バリケードが撤去され、デモが少なくなった町。
一見、平穏な暮らしが戻ってきたように見える。
以前はBGMのように聞こえていたシュプレヒコールもなくなり、
何日かに一度、思い出したように、窓の下を小さなデモ隊が通り過ぎるだけだ。
あとは、おやつを売る露天商の声や鳥の声がのどかに響いている。
ミャンマー情勢は緊迫し、今日もどこかで無実の市民が殺されているのに
私の暮らしを取り巻く空気は、こんなにも穏やかだ。
メディアやSNSを通して知る現実と、目の前の日常との、すさまじいギャップ。
・・・この感じ、知っている。
これは2月1日、クーデターが起きた後の感覚と同じだ。
___ 
スーチーさんが逮捕され、国軍が全権を掌握した、という
天変地異のようなニュースを知ったあの日。
おそるおそる町に出た私は、
いつもと変わらぬのんびりした空気と、穏やかな人々の様子に拍子抜けした。
あれ?大したことじゃないの?と勘違いしそうなほどだった。
でも翌日、オンラインミーティングで会ったミャンマー人スタッフに
いつもの笑顔はなかった。
泣き腫らした顔で「眠れなかった」と言った。
別の友人は「(国軍を)ぶっ殺してやりたい」と怒りを爆発させた。
Facebookでは、インターネット遮断がとかれるやいなや
次々と「Save Myanmar」などのハッシュタグができ
軍政に対する憤りがものすごい熱量で渦巻きはじめた。
2日目には、大勢の医療者や教員などの公務員が、
Facebookに顔や名前、所属をさらけ出して
「選挙で選ばれた政府のもとでしか働かない」とCDM(不服従)を宣言。
夜には、抗議の鍋叩きが始まった。
あのときも、町は穏やかだったのだ。とても。
人々は表面上、怒りを押し殺し
SNSの中で、いきり立つ気持ちをなだめあっていた。
だから私は今、かりそめの平穏を味わいながら
市民があきらめたわけではないことを確信している。

写真はTwitterより。気球の町、タウンジーのプライドを感じる抗議活動。

_____ 
今日、ひさしぶりに会った知り合いのおじさんに
「民主主義は勝つと思う?」と聞いてみた。
彼は「勝つと信じてるよ、100%信じてる」と断言した。
実は、1カ月以上前、彼には同じ質問をしたことがある。
そのとき彼は、たった一言「軍は強い」と、悲しそうに答えたのだった。
なんでそんな風に考えが変わったの?と聞くと、彼はこう言った。
「勝つかな?負けるかな?じゃなくて、勝たなきゃいけない。
 そう思うようになったんだ」
どうして?
「あまりにたくさんの人が殺されたからだ。子どもでさえ…。
 軍政は絶対ダメだ。
 軍に支配されたミャンマーは今、毎日、未来を失い続けているんだ」
最初はそんな風に思わなかったの?
「兵士だって、同じ人間だと思ったんだ。
 仏教徒なら、Dhamma(ダルマ≒道徳)を知っているはずだと思った。
 だけど、そうじゃなかった。あれはもう人間のすることじゃない」
_____
見せかけの、穏やかな日常は続く。
終わらない軍の非道なふるまいは、静かに市民の心を結束させていく。
明日は、サイレントデモをやるそうだ。
町には出ない。反軍政の声は上げない。
そうしてあたかも従順にひきこもることで、軍への抵抗を示す。
命を大事にした、ナイスアイディアだと思う。
_____
以前読んだ本に、こんな言葉があった。
「すべてを奪われても、たったひとつ、
 与えられた環境でいかにふるまうかという
 人間としての最後の自由だけは奪えない」

 

引用元リンク:https://www.facebook.com/JapaneseDiaryFromMyanmar/posts/114310674069893

写真元リンク:https://twitter.com/keren_khin/status/1363759140401651713?s=21

関連記事

 

ランキング

  1.  ドイツ・ベルリンで2年に1度、開催される鉄道の国際見本市「イノトランス」には、開発されたばかりの最…
  2.  今年秋、中国の高速鉄道の総延長距離が3万マイル(4.83万キロ)を超えた。最高指導者の習近平氏は、…
  3.  日本で暮らすミャンマー人が急増しています。出入国在留管理庁のデータによると、2021年12月に3万…
  4.  ドットワールドとインターネット上のニュースサイト「8bitNews」のコラボレーションによって20…
  5.  11月5日に投開票が行われた米大統領選挙では、接戦という事前の予想を覆して共和党のドナルド・トラン…

ピックアップ記事

  1.  11月5日に投開票が行われた米大統領選でトランプ氏が再選したことによって、国際情勢、特に台湾海峡の…
  2.  ジャーナリストの玉本英子さん(アジアプレス・インターナショナル)が10月26日、東京・青山で戦火の…
  3.  ドットワールドと「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロス…
  4.  米国・ニューヨークで国連総会が開催されている最中の9月25日早朝、中国の大陸間弾道ミサイル(ICB…
  5.  「すべてを我慢して、ただ食って、寝て、排泄して・・・それで『生きている』って言えるのか?」  パ…
ページ上部へ戻る