ポスト・コロナへの第一歩 新しい日常へ
外出制限が緩和され1カ月が経ったホーチミン 市中感染ゼロを更新中
- 2020/5/29
衛生用品を常設に ”新しい生活様式”の芽生え
衛生観念については、どうか。一時期、日本をはじめ世界中で品薄が深刻になったマスクについては、現在はドラッグストアなどで50枚入りの箱が1,000円前後で売られるようになった。以前は50枚入りで200円前後だったことを考えると、かなり割高ではあるが、再び店頭に並び始め、いつでも購入できるようになったことは大きい。日本をはじめ、海外市場へも精力的に輸出されているという。今後、マスクや消毒用のハンドジェルなどの衛生用品の売り場が「新しい生活様式」の一つとしてスーパーに常設され、人々の暮らしに定着していくのか、気になるところだ。
たまたまインターネットで見かけた広告も、衛生観念の変化を感じられ興味深かった。宅配スタイルのオンライン豚肉専門店「Meat deli」(https://youtu.be/hRyKMlyKvoA)のCMだ。部位別に切り分けて台の上に置かれたり吊り下げられたりしている肉を、客が素手でつかんだり、つついたりしながら鮮度を確かめて品定めするという、市場でお馴染みの習慣を逆手に取り、「清潔な肉とは、まだ誰もつついていない肉のこと」というコピーをつけて流しているのだ。日本なら市場の関係者から抗議が来そうなものだが、ポスト・コロナの潮流をうまくつかんだCMだと感じた。もっとも、最近はスーパーや街中の精肉店でもトングを使うところが増えているほか、市場でも客に直接触らせないようにする店が増えている。
海外足止めのベトナム人が続々と帰国 水際対策の強化が続く
気になる感染状況については、5月28日までの42日間、市中での感染は確認されていない。回復した人から再び陽性反応が出た例はあるが、300人あまりの感染者全員(うち280人ほどが回復)について、感染経路や行動が把握されており、死者は現在に至るまでゼロのままだ。クラスター感染も、ハノイの病院とホーチミンにあるバーの2カ所で発生したものの、大規模な感染拡大には至らなかった。
今月初めより、海外に足止めされていたベトナム人の帰国も始まった。フランスやイギリス、ロシアのほか、日本やインドなどからも帰国が進んでおり、その中の70人あまりから新たに感染が確認されている。さらに、帰国時の検査で陰性であった人も含めて帰国者は全員、有無を言わさず、政府が定めた集中隔離施設で2週間、隔離されていることも奏功し、市中での感染が避けられていると言えるだろう。
一方で、いわゆるソーシャルディスタンスについては、近所のスーパーでもとうに無視されており、レジ待ちの時も、床に描かれた立ち位置の指示を守っている者は誰もいないのが現状だ。とはいえ、この国ではもともとパーソナルスペースがかなり狭い、というより、ほとんど無く、そうした人との近さこそが「ベトナムらしさ」の一つだとすら言えるこの国では、いくら新しい生活様式が叫ばれても、こうした習慣はすぐには変わらないように思われる。少なくとも、筆者自身は予防を徹底し、あまり神経を尖らせ過ぎることなく、柔軟に暮らしたいものだ。