中国の一帯一路と対ラオス鉄道支援
メコンを渡る国際列車に乗って考えたこと
- 2019/10/9
中国の一帯一路政策の下、ラオスで高速鉄道の建設が進んでいる。経済規模が中国の地方都市にもおよばず、いまだに最貧国に位置付けられているラオスにとって、悲願とも言える事業だが、中国への依存や借金の増大、環境破壊など、多くの課題も懸念されている。隣国タイが、中国と共同で進めていた鉄道工事が中断するなど、不安材料も多い中、ラオスはどこへ向かうのか。メコン川を渡る国際列車に乗りながら考えた。
全長3.5キロの国際列車
中国の雲南省を源流に持ち、ラオスとタイの国境を流れるメコン川は、タイのラオス侵攻や、ラオスのフランス植民地化、ラオスで起きた内戦と難民など、ラオスにとっては負の歴史も見つめてきた大河である。
この川を渡る鉄道があるのをご存知だろうか。全長約3.5キロと決して長くはないが、車両と鉄道の併用橋である友好橋を走って、ラオスの首都ビエンチャン郊外のタナレン駅とタイ東北部のノンカイを結ぶ、れっきとした国際鉄道だ。
田園に囲まれたタナレン駅は、近くに店も民家もなければタクシーも走っていない、静かな景色の中にある。
それでも、タナレン駅には普通の駅にはない出入国管理の窓口と税関がある。日に2回、10時と17時30分に国際列車が出発しており、戻ってくる列車も併せて計4本が、現在、ラオス国内を走る鉄道のすべてだ。列車の到着と発車の時間以外、駅は閉鎖されている。
17時30分に発車するノンカイ行きの列車に乗ろうと、20バーツ(約56円)で切符を買った。「タイ国鉄」とタイ語で印刷されている。全席、自由席で、乗務員はみな、タイ人だ。
3両編成の列車は、定刻通りに発車した。10人の乗客は皆、外国人旅行者のようだ。田園の中をしばらく走り、突如、目の前にメコン川が広がった。友好橋を列車が渡っている間、車両は通行止めになる。心地よい川風が窓から吹き込み、橋の欄干にラオス国旗がたなびいている。
「メコン川を鉄道で渡る」と聞くと、何とも言えないロマンに胸ときめかせる鉄道好きも多いだろう。実際、2009年の建設当時は、もの珍しさもあって、連日、多くの人々が詰めかけたという。しかし、タナレン駅がビエンチャンからアクセスが悪いこともあり、利用客の数は近年、減り続けている。車内はこの日も心配になるほどガラガラだった。