「ウィズコロナ」に舵を切るベトナム
経済活動を手探りで再開し、景気をテコ入れ
- 2021/12/31
海外との往来再開と隔離の緩和
11月20日、200人超の乗客をのせた韓国からのチャーター便が、南部のリゾート地フーコック島に降り立った。外国人や海外在住のベトナム人観光客を受け入れる試みで、特に外国人観光客は約2年ぶりに迎えたことになる。3泊4日の間、滞在を島内に限定し、外部との接触を極力避ける「バブル方式」と呼ばれるパッケージツアーで、 参加客はいずれも2回のワクチン接種を終えており、到着時に健康管理や行動履歴などをトラッキングできるベトナム独自のアプリのダウンロードを義務付けられた。さらに、到着日と出発日に専用の病院でコロナウイルス検査を受ける徹底ぶりだ。
制約はありながらも、参加者はオーシャンビューのホテル滞在や島内のアミューズメントパークのアトラクションを楽しみ、ベトナム料理に舌鼓を打ち、久々の旅行を楽しんだ。これを皮切りに、中部にあるニャチャンやダナン、ホイアンなどのリゾート地でも、同じやり方で外国からの観光客受け入れを再開している。コロナ禍で冷え込んだ観光業界には明るい兆しが見られる。
国際線の商用便もまもなく再開される見込みだ。ベトナムは2022年1月より、経済的な結び付きが強く、かつ感染拡大が抑制されている国々との商用便を対象に、運航を再開させる。
第一弾として、日本とベトナムの間で週8往復の商用便の再開が予定されている。ワクチンの接種を終えているか、または感染後に回復済みである入国者の場合は3日間の自宅隔離となるが、接種がまだだったり、接種を終えていなかったりする入国者の場合は、7日間の自宅隔離となる。これまで入国者は有無を言わせず、指定ホテルや施設で7日間の強制隔離が義務付けられていたことを考えると、大幅な緩和だと言えよう。商用便の運航再開は、日本のほか、韓国やアメリカなど、10カ国ほどの国や地域が想定されている。
恒例の花火は中止、帰省客も鈍い出足
この時期になると話題になるのが、正月の過ごし方だ。ベトナムは旧正月がメインで、2022年の元日は2月1日なのだが、毎年、西暦の1月1日にホーチミンで打ち上げられる恒例のカウントダウン花火は楽しみの一つだ。ホーチミンでは感染者数が減りつつあり、12月半ばまでは「例年通り挙行の見込み」と報じる大手メディアもあっただけに、中止されることになり残念に思っていたのだが、中止が決定された直後の12月27日、ベトナム国内で初のオミクロン株による陽性者が確認された。1週間ほど前にイギリスからハノイに到着し、隔離中の検査で明らかになったという。情勢が見通せない中での大規模イベントの開催には、やはり慎重にならざるを得ない。
チン首相は、年末年始と旧正月に備えて大人数で集まる活動を禁止するよう、各地方自治体に通達した。例年なら帰省客で早い時期から予約が埋まる鉄道も、例年の2割ほどにとどまっている。旧正月前までの利用に食事やドリンクが付く無料特典を設けていた長距離バスの運行会社も、2月末までサービスの継続を決めたという。利用客も感染状況を直前まで見定めた上で手配しようと考えているようだ。
1月からは、クリスマスの飾り付けが、旧正月のラッキーカラーである赤や金色に衣替えするだろう。いつものような賑わいやイベントは望めなくても、華やぐ街の姿に心躍る感覚は忘れずにいたいものだ。