バングラデシュの報道写真が語るもの
路上生活者のために個人の力でできることを
- 2020/12/29
新型コロナがいまだに猛威をふるう世界で、苦しい環境に置かれる貧しい人々はさらに苦難を強いられている。12月13日付のバングラデシュの英字紙デイリースターは、同紙が前日に掲載したホームレスの親子の一写真をめぐる社説を掲載した。
一枚の写真
デイリースター紙が12月12日に掲載した写真は、母親とみられる女性と乳飲み子が、歩道で一枚の紙の上に薄い布一枚にくるまって横たわっている写真だ。乳飲み子の傍らには哺乳瓶が置いてある。社説はこの写真についてこう語る。
「路上で眠る母と子には、彼女たちを冬の寒さから守る暖かい毛布も布もない。この写真がすべてを語っている。屋根のある場所で休むことができない人々には、他に選択肢がない。気候変動による雨や嵐、極寒の風にさらされないよう祈るだけだ。しかしどうして私たちは、極限の貧しさやネグレクトを示すこのような姿を目の当たりにしなくてはならないのだろうか」
社説によると、バングラデシュは12月中旬には気温が10度以下に下がり、寒波に襲われるという。
「政府に対し、貧しい人々の苦しみを和らげる措置をとるよう強く求める。通常ならば、政府や非政府組織や民間の人々があたたかい布や毛布を配布すべきところだが、新型コロナの感染爆発により、そのような取り組みが遅れているようだ」
一市民としてできることも
冬の訪れとともに、新型コロナの感染もさらに広がる懸念が深まっている。社説も、行政当局が迅速に対応をとり、まずは路上生活者に必要な防寒具を配るべきだと指摘している。バングラデシュでは、2020年12月中旬までに約49万人の新型コロナ感染が確認されている。そのうち7000人あまりが死亡した。感染者数が上昇したピークは6月で、1日あたり3000人を超える新規感染者が確認されている。その後は1日あたり1000人程度まで下がったものの、11月に入ってその数は徐々に増える傾向にある。
社説は重ねて行政当局に対策を求める一方で、民間の協力も呼びかける。
「社会のより裕福な層の人々は、現金などを信頼できるチャリティー団体へ寄附すべきだ。それは、各自のやり方と判断でできるはずだ。危機的な状況にある現在、社会の中でより恵まれない人々を私たちは無視してはならない。暖かく、十分な食べ物もある状態で居心地のいい我が家にいる私たちは、意識の高い市民としての役割を果たそう。私たちの町の路上でおなかをすかせ、寒さに震えている人たちを助けるために」
もしこの呼びかけが人々の心に届き、一枚の写真からあたたかい協力の輪が広がったとしたら、報道写真の持つ力強いメッセージ性が証明され、メディアが持つ影響力が社会を動かしたことになるだろう。新型コロナはそれ自体、多くの悲劇や困難をもたらした。しかしそのために見えなくなってしまっている現実があることを、私たちは忘れてはならない。政府や行政を批判するばかりではなく、個人ができることは何か。そんなメッセージが伝わる社説である。
(原文:https://www.thedailystar.net/editorial/news/the-homeless-are-shivering-the-footpaths-2010313)