バングラデシュの社説がバイデン米大統領誕生を歓迎
分断した社会と移民への差別には強い懸念

  • 2021/2/8

1月20日、米国でジョー・バイデン大統領が誕生した。1月23日付のバングラデシュ新の英字紙デイリースターは、社説でこの話題を採り上げ、「バイデン氏の就任は民主主義の勝利だ」と評価した。

(c) AronPW / Unsplash

リベラルデモクラシーの新たな幕開け

 米国の第46代大統領に就任したバイデン氏は就任演説で、「民主主義が勝利した。社会の分断が深く現実のものとして立ちはだかっているが、国民の結束に全霊をささげる」と述べた。トランプ前大統領の支持者らによる暴動などの懸念もあり、厳戒態勢の中で就任式は行われたが、結果的には大きな混乱もなく終了した。社説は、「バイデン新大統領は就任演説のなかで、民主主義が勝利したことと、深く分断したアメリカ社会の統一を強く呼びかけた。そして、すべての米国民に対し、過激で不寛容な信念に抵抗し、コミュニティ間、違う考えを持った人たちとの間に橋をかけることを選ぶように訴えた」と、表現した。
 「米国民のみならず、世界中の民主主義支持者や合理的な考え方を好む人たちにとって、波乱と議論を巻き起こしたトランプ政権の終焉は安堵をもたらすものだった。同時に、ホワイトハウスから発信された右翼的で偏見に満ちたレトリックや、言論の自由という大義名分のもとに科学と理性が否定されるという危険な状況も終焉した。バイデン政権の誕生がリベラルデモクラシーの新たな時代の幕開けになると多くの人が感じている」
 さらに、女性として、黒人として初めての副大統領に就いたカラマ・ハリス氏については「力量は未知数であるが、ハリス氏の副大統領就任は、世界中のマイノリティーにとって希望の象徴である」として評価した。その一方で、「もっともなぜ米国のような国においてこのような抜本的な変化が2021年まで起きなかったのか、という疑問は残る」とも指摘している。

マイノリティーへの根深い反感

 また、バイデン大統領が就任直後からトランプ政権下で設けられたイスラム圏からの入国規制という悪名高き措置を撤廃したり、トランプ政権が離脱を宣言した地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定への復帰を果たしたり、白人至上主義を強く非難したりしていることを指摘し、「米国の民主主義がより希望にあふれ、包括的でリベラルなものになっていくことが期待される」と、評価する。
 しかし、楽観的な見方ばかりではない。社説は、トランプ政権があぶりだした米国の分断を「根深いもの」だと指摘する。
 「政権移管が懸念されていたよりもスムーズに終わったことは、米国で民主主義がまだ機能していることを示していると言える。しかし、社会の分断は根深い。移民やマイノリティーに対する反感も無視できないほど深刻だ」
 社説は、米社会のマイノリティーの中には20万人以上と言われるバングラデシュ系米国人も含まれている、と指摘する。
 「トランプ政権下で、人種差別というパンドラの箱が開いてしまった。バイデン大統領は、マイノリティーの支持者たちへ約束したことを忘れず、彼らの権利を守らなくてはならない。深く分断した社会の結束は、バイデン政権の能力を試す最大の課題になるだろう」
 多くの移民が暮らす米国社会の分断は、そのまま世界の分断でもあった。バイデン大統領の手腕に世界が注目している。

 

(原文: https://www.thedailystar.net/editorial/news/bidens-inauguration-win-democracy-2031957)

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