デジタル・バングラデシュ
わが黄金のベンガルよ、コネクテッドがもたらす未来
- 2019/7/14
バングラデシュに響き渡りはじめた、デジタル革命の足音
いまではバングラデシュ国歌となっている 『わが黄金のベンガルよ』 の詩を編んだのは、アジア人として初のノーベル文学賞を受賞した詩聖・タゴールだった。バングラデシュとは 「ベンガルの国」 を意味する。
バングラデシュといえば、”アジア最貧国”とのイメージが強いのではないだろうか。
1971年の独立戦争後、貧困や疫病、飢饉等で苦しむ人々の姿に、米国ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンでは元ビートルズのジョージ・ハリスンとインドのベンガル地方出身のシタール奏者ラヴィ・シャンカールの二人によってロック界初のチャリティーコンサートが開催され、それは後に 『USA・フォー・アフリカ』 等の大掛かりなベネフィット・コンサートの範となった。日本では、1972年に国際協力NGOであるシャプラニールが、バングラデシュ現地で支援活動を開始している。
半世紀を経たいま、バングラデシュは世界で中国に次ぐアパレル産業大国となった。
GAP、H&M、ZARA、ユニクロ等の世界中のファストファッションブランドの工場が集積し、2018年のアパレル製品輸出高は320億㌦となり、国の輸出全体の84%をアパレル産業が占めている。もともと英国統治下にあった歴史的経緯からビジネス公用語が英語であること、同様に人件費が安価なミャンマーと比較しても、人口が1億6,000万人を超えるバングラデシュでは若年層の労働力も豊富で獲得が容易であることから、グローバルに事業を展開する労働集約型産業にとって好条件が揃っていたことが背景にある。ここ2年間の実質GDP成長率は、政府目標の7.4%を上回る7.6%と好調だ。しかし、中長期的に経済成長を持続させるには、生産性の伸び悩みを克服することが課題となっていた。それには輸出・投資主導の経済へと移行し、積極的に生産性の高い外資系企業を受け入れ、イノベーションを加速させる必要がある。