欧州の在り方を揺さぶるドイツ総選挙を読む
メルケル首相の引退で変化は起きるか

  • 2021/9/11

「連立次第」の政策の行方

 とはいえ、連立によって形成するドイツの政権は、第一党のみならず、連立政党が政策を持ち寄るため、多くの妥協と調整が行われる。そのため、誰が首相の座に就くにせよ、連立が全体として保守寄りになるか、リベラルになるかによって、その有り様は大きく変わる。

 現在はどの政党も支持率が25%以下であるため、過半数を獲得するためには3党の連立が必要になると予想されるが、各党の主張が同じではないため、連立内で政策がぶつかり合い、打ち消し合うこともあり得るからだ。

 どの党が第一党になるにせよ、連立入りする可能性が最も高いと見られるのが緑の党だ。仮に、CDU/CSUが第一党となった場合は、ビジネス寄りである中規模政党のドイツ自由民主党が保守連立に加わり、そこへ緑の党が加わる連立政権が形成される可能性が高いと予測されている。しかし、ビジネスを重視する2つの保守政党に、より先進的な環境対策を主張する緑の党が加わっても、どれだけ環境政策を取れるのかは疑問だ。

 実際、緑の党は「クリーンエネルギーの割合をさらに増やした上で、工業用褐炭の廃止を前倒しし、2030年以降はガス排出車の販売を禁止する」と主張しているが、CDUは「緑の党の主張はビジネスに足枷をはめるものだ」と批判している。

 他方、SPDが第一党になった場合、連立に加わると目されているのは緑の党だけではない。保守寄りの自由民主党を加えた中道連立か、極左に近い左翼党を加えたリベラル連立か、どちらかになる可能性もあると言われている。

 しかし、富裕税を導入し、国家投資を大幅に増やしたいSPDと緑の党に、減税と均衡予算を望む自由民主党が加わって連立を形成すると、互いに政策を相殺し合う可能性がある。
 その反面、北大西洋条約機構(NATO)を軸とした米国との協調を重視するSPDと緑の党が、NATO解体を望む左翼党を受け入れても、やはり政策がぶつかる。左翼党との連合は、中道派や右派のドイツの有権者、ビジネス界からも強い反発が予想されるが、ショルツ氏はこれまでのところ、その可能性を間接的にしか否定していない。

 今後、どんな政権が形成されるにせよ、連立内で政策を打ち消し合い、本来求められる強い政策を打ち出せなくなるのではないかという点が懸念される。

 選挙結果を予測する世論調査は、必ずしも正解を提示するわけではない。有権者の声に応えることができる政権が成立するのか、今後の動きに注目したい。

 

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