ドイツ総選挙で世代と地域の格差が浮き彫りに
連立成立まで読めない新政権の形

  • 2021/10/5

深刻な東西格差

 極右政党である、ドイツのための選択(AfD)は、前回の選挙で反難民政策を訴えて支持を集め、連邦議会入りを果たしたが、今回は11議席減らして83議席となり、第三党から第五党に転落した。AfDは、新型コロナの陰謀説を信じてワクチン接種や行動規制に反対する人々からの支持を集めようとしたが、十分ではなかったのだろう。

 とはいえ、AfDは、旧東ドイツのザクセン州とテューリンゲン州では支持を獲得。東部のザクセン・アンハルト州に続いてこれらの州でも第二党となり、大きな存在感を示している。

選挙区別選出議員の政党(c) 南ドイツ新聞

 ドイツは、1990年に東西統一が実現し、旧東独の5州が西独に統合されたが、格差は今なお残っている。実際、旧東独の大都市や、首都ベルリンを取り囲むブランデンブルグ州以北は、人口が流入し、経済も発展したのに対し、旧東地域全体で見ると、依然として失業率は高い。

 この地域では、今も高学歴層を中心とした人口流出が進んでおり、経済も人々も取り残されている。人々は、東西統一によって自由を得た一方、それまでの社会や経済が崩壊したことに伴う混乱によって、描いていた人生設計が否定され、習得した技術や資格が通用せず、職を失うなど、さまざまな苦難にさらされている。中には、西独や外国企業が賃金の安さを求めて東側に移転するケースも見られ始めたものの、東側に本社を持つ有力企業はいまだいない。ドイツという一つの国であっても、人々が見ている社会や現実は、東西によって大きく異なっているのだ。

 例えば、東部の州では2014年、反イスラムを掲げるペギダという組織が発足したほか、人種差別や白人至上主義的な政策を掲げる極右勢力による暴力事件も継続的に続いている。自分たちの権利を主張する白人至上主義のポピュリスト政党は支持を集めるのはそのためだろう。

 また、東側3州は、前述のように新型コロナウイルスの陰謀論を信じる人々も多く、最近、ワクチン接種会場の襲撃未遂事件が起きた。ザクセン州ではワクチンを2回接種した人の割合が55%と全国平均より10%低く、新型コロナ感染による死亡率も比較的高い。

 このように、西側に比べて明らかに格差がある東部地域において、極右政党が着実に支持を伸ばしているのは、ドイツの不都合な現実である。オンライン上ではヘイトスピーチの取り締まり強化などの措置が取られているものの、東側の人々の不満に十分向き合う対応は、これまでのところ取られていない。

政党間の根深い対立

 SPDのオラフ・ショルツ氏は、クリスマスまでに緑の党およびFDPと連立を形成し、過半数を確保したいとしている。しかし、そのためには、環境や外交政策、産業政策など3党の間の対立点の調整に向けて多大な努力が必要であり、難航が予想されている。

政党別、重視する環境政策の項目とその程度

 他方、僅差で敗れたCDU/CSUも、緑の党およびFDPと連立を形成して政権を握る可能性を諦めていない。首相は連邦議会での投票で選ばれるため、理論的にはそれも可能なのだ。

 EUの実質的なリーダーで、世界において「民主主義の最後の守護者」と評されてきたメルケル首相に代わる、次期ドイツ首相は誰になるのか。これから選出され、発足する政権が、メルケル氏と同様の影響力をEUや世界に対して及ぼせるかは、全く未知数であり、今後の展開に注目したい。

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