【歩く・見る・撮る】― 写真民俗誌/民族誌へのいざない ―
ミャンマー(ビルマ)から  ⑥<国境風景>

  • 2024/4/15

ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全権を掌握した」と宣言してから3年以上が経過しました。この間、クーデターの動きを予測できなかった反省から、30年にわたり撮りためてきた約17万枚の写真と向き合い、「見えていなかったもの」や外国人取材者としての役割を自問し続けたフォトジャーナリストの宇田有三さんが、記録された人々の営みや街の姿からミャンマーの社会を思考する新たな挑戦を始めました。時空間を超えて歴史をひも解く連載の第6話です。

⑥<国境風景>

 ミャンマー(ビルマ)は、隣国5カ国タイ・ラオス・中国・インド・バングラデシュと国境を接し、国土の広さが日本の約1.8倍あると説明される。
 しかし、そこで、一つ気に留めておくべき事柄がある。それは、ミャンマー全土の地図を再確認してみると、例えば北方カチン州の州都ミッチーナ(北緯25度)は台湾の台北ぐらい(北緯25度)にあり、ミャンマー最北のタフンダン村(北緯28度)に至っては日本の奄美大島付近に位置する。
 また、旧日本軍がかつてビルマに侵攻した際、東南アジア方面を担っていたビルマ方面軍が南方総軍指揮下にあったため、ビルマは「南方」にあるという思い込みが今でも強いようである。
 ちなみに、外務省のウエブサイトで世界全図と東南アジアの地図を見ると、ミャンマー(ビルマ)の位置は、結構、南にある。また、ミャンマー本土の南西のアンダマン海には、インドの連邦直轄領である「アンダマン・ニコバル諸島」がある(地図上⑦)。

 ミャンマーを考える際、現在の首都ネピドーや最大都市ヤンゴンだけでなく、この国はどの国と国境を接していて、それら隣国とどのような関係を持っているかを同時に考えてる必要があるのではないだろうか。
 そんなミャンマー全土を頭に描きつづ、これまで私が訪れた国境周辺を紹介してみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

関連記事

ランキング

  1. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  2.  かつて恵比寿の東京写真美術館で、毎年開催されていた「世界報道写真展」。その2024年の受賞作品が4…
  3. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  4. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  5.  2023年10月にパレスチナの軍事組織ハマスがイスラエルに大規模攻撃を仕掛けて以来、イスラエル軍に…

ピックアップ記事

  1.  中国とフィリピンの対立がにわかに先鋭化し、国際社会の関心を集めている。事態は、実質的に中国の第二海…
  2.  かつて恵比寿の東京写真美術館で、毎年開催されていた「世界報道写真展」。その拠点となるオランダ・アム…
  3.  台湾の頼清徳政権が正式にスタートして一カ月あまり。非党派・非営利団体・財団法人・シンク…
ページ上部へ戻る