インドの社説がコロナ対策で政治と科学の連携訴え
自国産ワクチンによるブースター接種についてインドの社説がさらなる調査を要求
- 2022/1/7
新型コロナのオミクロン株による感染拡大を受け、世界各地でワクチン接種を加速化する動きが出ている。自国でワクチンを生産するインド政府も、2022年1月から3回目のブースター接種を開始することを発表した。2021年12月27日の英字紙タイムス・オブ・インディアは、社説でこの問題を採り上げた。
ワクチン製造国の不思議
インド政府は2022年1月から3回目のブースター接種と、子どもたちへのワクチン接種を開始することを明らかにした。しかし、詳細はまだ明らかにされていない。社説は、政策が常にあいまいで情報提供が不足していることについて、「国内で新型コロナウイルスの研究が熱心に行われていないためだ」と指摘する。
「オミクロン株の早期発見に努めた南アフリカや、同様に素晴らしい努力をした英国の科学者たちなど、新型コロナに関する研究の多くは、科学者と政府が感染拡大に素早く反応し、対応することで成果を出してきた。同時に、得られた結果を共有して各国の政策に反映することも重要だ。素早く、システマティックな研究がインドでも可能なはずなのに、行われていない」
確かにインドは自国で新型コロナワクチンを製造する数少ない国の一つであり、新型コロナに関する研究が進んでいないというのも不思議な話である。
「残念ながら、インド国内ではワクチン接種に関する調査はほとんど行われていない。現在、かろうじて実施されているのは、インド産ワクチンのコビシールドとコバクシンを混ぜて接種することの影響や、ブースター接種への利用可能性についてだ。これらの結果は、インド政府がブースター接種を始める前に分析されなければならない」
科学者との共闘を
さらに社説は、インド政府がその結果を国内の科学者とも共有すべきだ、と主張する。インドでは2021年4月、約900人の科学者がインド政府に対して型コロナワクチンに関する情報の透明性を求める文書を提出した。
「公衆衛生が危機にさらされている今、より多くの専門家を研究や調査の分野に配置しなければならない。インド医科学研究会議所(ICMR)やワクチン接種に関する政府のデジタルプラットフォーム(CoWin)には、多くの情報があるはずだ。国内の研究が少なければ、政府は外国の調査に頼りながらコロナ政策を決定するか、価値のない論拠に基づいて判断を下さざるを得なくなる」
また、政府のコロナ対策には十分な科学的根拠があるのか、と疑問を呈する。
「英国はアストラゼネカを2回接種した人に対し、同じワクチンをブースター接種に使うことを許可していない。しかしインドでは、そのアストラゼネカから技術供与を受けて製造しているコビシールドが、ブースター接種にも利用される予定だ。この科学的な根拠はどこにあるのか。新型コロナの感染拡大と闘うためには、国内のすべての資源を動員する必要があるが、インドの科学者のコミュニティーは、十分に活用されているとは言えない」
13億人あまりの人口を擁するインドは、新型コロナの感染事例の蓄積も豊富だ。病理研究以外にも、ワクチン接種の進め方など、公衆衛生的な研究素材も多い。科学と政治には健全な結び付きが不可欠だ。
(原文https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/the-missing-link-indias-domestic-research-on-the-pandemic-and-vaccine-impact-has-been-sadly-inadequate/)