議長国インドの手腕問われたG20、アジア各紙の反応は
厳しい分裂とアフリカ連合の加盟で注目されるサミットの行方

  • 2023/10/9

 G20サミット(主要20カ国首脳会議)が9月9日と10日、開催された。議長国を務めたのは、グローバルサウスの中心として存在感を強めるインド。中国やロシアを含む20カ国の話し合いをどう采配するかが注目された。 

 G20サミットには、日本からは岸田首相、アメリカからはバイデン大統領が参加した。一方、これまでG20サミットへの参加を欠かさなかった中国の習近平国家主席は今回参加せず、代わりに李強首相が参加。また、ウクライナ侵攻で非難を浴びるロシアからは、プーチン大統領ではなく、ラブロフ外相が出席した。

 ウクライナ侵攻への言及が注目された「首脳宣言」は、ロシアという国名を出さずに「すべての国は領土獲得のための威嚇や武力行使を控えなければならない」と表現するにとどめられた。また、アフリカ諸国が加盟するアフリカ連合がG20の正式メンバーとして承認された。

G20議長国インドのモディ首相とバイデン米大統領(ニューデリー)(2023年9月9日)(c) Wikimedia Commons/ The White House

弱気な首脳宣言を批判するシンガポール紙

 シンガポールの英字紙ストレーツタイムズは、9月13日付の社説で、G20サミットの「成果」について論じた。

 社説は、「G20はこれまで何度も弱気な声明を出して非難を浴びてきたが、今回も例外ではなかった」と手厳しく批判した。さらに、「今年の首脳宣言は、戦争や貿易紛争、大国間の対立、気候変動など、深刻化するさまざまな問題に対して必要なビジョンや目標を打ち出せなかった。せいぜいギャップを縮めたり、亀裂をごまかしたりするので精いっぱいだ」と指摘。その背景として、そもそも G20は経済協力的な側面が強いつながりであり、各国がまったく異なる世界観と関心を持っていることを挙げた。

 一方で、「G20諸国が毎年集まることには価値があり、(インドの)巧みな外交もまた助けになった」と述べ、首脳宣言が出せない状態に陥らなかったことに対しては一定の評価を下した。

議長国インドの手腕を評価したインドネシア紙

 昨年の議長国を務めたインドネシアはどう見ているだろうか。英字紙ジャカルタポストは9月12日付の社説でG20について論じた。

 社説は冒頭、今回のサミットが中国とロシアの首脳が欠席するという「厳しい分裂の中」で開催されたことに言及した。しかし、「首脳らがロシアへの反発を露骨に表明したジャカルタでのサミットとは異なり、今回、参加者たちは自制心を十分に発揮し、宣言文を作成した。合意形成を加速させるために、主催者側はロシアに対する直接的な批判を避けた」と、インドの「手腕」を評価した。

 社説はまた、こうした多国間フォーラムについて、「共通の土台を模索する場として不可欠」との見方を示したうえで、「緊張が高まった際、最悪の事態を避けるために一歩下がることをすべての当事者に思い出させる仕組み」だとして、その役割の重要性に言及した。

変貌するG20に期待を寄せるパキスタン紙

 パキスタンの英字紙ドーンは、9月12日付の社説で、G20が「西側諸国主導のオールドボーイズクラブ」から、より包括的な組織へと変貌を遂げようとしている、と評価した。また、アラビア半島を経由してインドと欧州を結ぶ経済回廊である「現代のスパイス・ロード」計画について取り上げ、「中国の一帯一路構想に対抗するもの」と位置付けたうえで、「G20がこうした新たな動きをはらむ大きな変化を示している」と論じた。

アフリカとの接近に意欲を示すインド紙

 議長国であったインドは、G20について複数の社説を掲載しているが、英字紙タイムズオブインディアが9月11日付で取り上げたのは、アフリカ諸国のG20参加に関する内容だ。

 社説は、「アフリカ連合(AU)のG20入りは、インドのイニシアティブで達成された。このことは、地政学的に見て大きな意味を持つ」と、高く評価する。その理由として社説は、アフリカが世界的な成長拠点となる可能性を秘めていること、天然資源の宝庫であることなどを挙げた。さらに、その重要性にもかかわらず、アフリカがこれまで国際社会の中でほとんど発言権を持たなかったことに触れ、「今回のG20入りでこの不均衡が解消される」と、期待を示した。

 アフリカでは、インドと中国が、貿易以外の面でも熾烈な「パートナー争い」を繰り広げている。しかし、社説によれば、インドとアフリカは今年初めに初の陸軍参謀総長合同会議を開催した。また、セーシェル、モーリシャス、モザンビークの三カ国が2017年から2022年にかけてインド産武器輸入国トップスリーに並ぶなど、「アフリカにとってインドは重要な防衛サプライヤーになりつつある」という。

 社説は、「G20にAUが加わったことで、インドとアフリカの結び付きに新たな勢いが加わった。中国が示したように、アフリカではスピードが命運を握る。G20は成功した。インドがアフリカの配当を得るためには、すぐに動き始めるべきだ」と、主張した。

 

(原文)

シンガポール:

https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/g-20-summit-a-qualified-success-at-best

インドネシア:

https://www.thejakartapost.com/opinion/2023/09/12/cooling-down-at-g20.html

パキスタン:

https://www.dawn.com/news/1775399/g20-summit

インド:

https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/african-dividend-after-g20-inclusion-of-au-india-must-take-ties-with-africa-to-next-level/

 

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