バンコクの大気汚染に早期対策を
国の経済を支える労働力の健康を守れ
- 2019/10/7
タイの首都、バンコクの大気汚染が悪化している。乾季が近づき、状況がさらに悪化することを懸念し、バンコク・ポスト紙は9月29日付の社説でこの問題を採り上げた。
環境基準超える汚染
バンコクで問題になっているのは、微小粒子状物質(PM2.5)。主な発生源は、工場からのばい煙や、自動車の排ガスなどである。社説によれば、9月末、バンコクの少なくとも4つの地区で、PM2.5の濃度が、タイの安全値とされる50㎍㎥を超える51から60㎍㎥に及んだという。ひどい場所では、9月28日に148㎍㎥を記録した。
社説は、「これまでも大気汚染は悪化していたが、人々は気付くことがなかった。昨年、PM2.5の濃度が人体に害を及ぼすと言われる100㎍㎥を超えた時に、初めてその深刻さに気付いたのだ」と、指摘する。都市部の大気汚染は、交通渋滞や鉄道、コンドミニアムなどの建築が主な原因と言われる。一方、農村部の大気汚染は、サトウキビやトウモロコシといった換金作物のプランテーションのための焼き畑や森林火災などが原因とされる。「特に、プランテーション農業の広がりは、隣国ミャンマーやカンボジアの環境にも悪影響をおよぼしている」と、社説は懸念する。
観光のハイシーズンと重なる
バンコクでPM2.5による大気汚染が悪化するのは10月から2月の時期だという。しかし、この時期は乾季であり、ちょうど観光のハイシーズンでもある。こうした状況は、バンコクのみならず、観光地として人気の高い北部の古都チェンマイでも同様で、昨年は3月になっても、スモッグに悩まされる日々が続いたという。
社説は、政府と地方行政当局に対し、「この問題に何ら有効な手立てを考えておらず、せいぜい公共の場所に噴霧器を設置することしかしていない。それも有効な手段かどうか疑わしい」と、厳しく指摘し、問題意識の低さを批判する。さらに、「バンコク都庁の環境担当者も問題を真剣にとらえず、微小粒子の濃度は一日中高いわけではない、とか、毎日高いわけではない、などと言っている。交通渋滞がひどい時や、大規模な工事が行われている時にだけ発生しているのではないか、とも言っている」とも嘆く。
「彼らは、人々がパニックに陥らないよう、あえてそんな発言をしているのかもしれないが、それは誤っている。昨年、チェンマイの担当者が、観光客の減少を恐れ、問題をあえて軽視していた時と同じだ」
交通渋滞の解決を
さらに社説は、政府や行政当局が長期的な対策を立てないことも非難し、特に、バンコクの交通渋滞を根本的に解決する必要がある、と指摘する。「昨年、大気汚染の問題が深刻化した際に、当局は電気自動車の利用を促進することを検討した。しかし、もっと重要なのは交通渋滞そのものを解決する方法を考え、公共交通をより効果的に整備することだ」
その上で、社説は「さもなくば、電気自動車を買える富裕層だけが汚染から身を守り、貧しい人々は汚染にさらされたままになる」と指摘。「いずれ、国の経済発展を支える労働力の健康が損なわれることになるだろう」と、警告している。
(原文:https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/1760549/time-to-take-smog-seriously)