分断された人々をつなぎ平和をもたらすワイン
紛争が絶えない中東で紛争当事者が共に働くワイナリー設立の実現に向けて

  • 2022/12/9

形を変えて続く夢

 レバノンを訪問してちょうど1年後の2022年11月、無事にメルセルワインで造られた3種類のワインを、ユナイテッドピープルワイン(https://upwine.jp/)で発売することができた。ワインを購入することで、前出のシリア難民、アブダラが描く「いつか祖国でワイナリーを設立したい」という夢を応援できるという仕組みだ。さらに、売上の3%は現地で支援活動を行っているNGOのパレスチナ子どものキャンペーンに寄付することにした。

 こうして、筆者が20数年前に描いていた夢に、今、少しずつ近づいている。イスラエル・パレスチナの地でワイナリーを設立するためには、さらに10年の歳月がかかるだろう。しかし、。ワインを通じて、あらゆるボーダーを超えた友情関係を育んでいくという夢の実現に向かって、着実に走り始めている。友情こそが平和の礎になると信じているからだ。

 最後に、レバノンに到着した直後の日記を再び紹介したい。

 「20年以上前の夢を叶える大きな一歩。それが、今回のレバノンへの旅だ。昨日、機内のモニターで見た地図には、ベイルート、ホムス、ラタキア、アレッポ、エルサレム、テルアビブが記されており、感慨深いものがあった。1999年1月に初めてイスラエル・パレスチナを訪問してから、21年の歳月が流れた。あの時に思い描いていたワインの夢と、今、描いているワインの夢は、形が違う。しかし、これで良かったのだ」

地中海方面に沈む太陽(筆者撮影)

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