マレーシア、禁煙規制は合法
健康的な生活環境を目指して
- 2019/11/11
いまや「禁煙」は、飲食店のみならず、多くの公共の場所で当たり前になりつつある。マレーシアでも、2019年1月から、すべての飲食店において全面禁煙が実施された。マレーシアでは、それまでも公共の場所や官公庁、宗教施設などが禁煙とされていたが、飲食店の全面禁煙はインパクトが大きかったようで、喫煙の権利を主張する人々が、「禁煙は憲法違反だ」として、マレーシア保健省を訴える事態に発展した。
マレーシアの英字紙スターは、高等裁判所が10月29日、この訴えを退けたことを受けて、健康な生活についての社説を掲げた。
「3m離れれば……」
「飲食店の全面禁煙は、喫煙の権利を侵しており違憲」だと言えるかどうかが争われた今回の裁判で、クアラルンプール高等裁判所は、「喫煙者は飲食店から3m離れれば喫煙ができる。全面的な禁煙ではないため、権利を侵しているとは言えない」との判断を示した。
社説はこの判断を歓迎しながらも、一方で「原告が控訴する構えであることから、喫煙の権利をめぐる法的な論争はまだ終わりそうになく、健康的な生活環境を目指すたたかいも続く」と指摘し、「禁煙令が定着するまでには、まだ時間がかかる」との見方を示す。
「健康な生活環境」が、なぜ重要なのか。社説は、「喫煙による慢性疾患を減らすことができれば、結果的に国家の保健関連支出も減る」と、理由を述べ、「国民が健康になるための法律は評価されるべきだ」と、主張する。
社説によると、非感染性疾患あるいは生活習慣病と呼ばれる病気は、世界中で死亡原因の7割近くを占めるという。最も多いのは、狭心症や心筋梗塞などを含む「虚血性心疾患」。続いて脳卒中、3位に喫煙と関係すると言われている慢性障害肺疾患、4位に肺がん、5位に糖尿病、などとなっている。
マレーシアではどうか。保健省が2016年にまとめた統計によると、死亡原因の第一位は虚血性心疾患で、13.2%。このほか、脳卒中や糖尿病、慢性障害肺疾患なども死因のトップ10に入っている。
「われわれは、すべての場所で禁煙するよう求めているのではない。飲食店から3m離れて喫煙することは、喫煙者にとってそれほど難しいことではないだろう。喫煙者に喫煙する権利があるのと同様に、非喫煙者にもきれいな空気を吸う権利がある。法治国家として秩序を守るために、法律は遵守されなくてはならない」と、社説は主張している。