「新しい政治文化が誕生した」
新型コロナでスーチー氏が国民と対話

  • 2020/5/9

 5月7日の段階で累計の新型コロナウイルスの感染者が162人と、タイなどの近隣国に比べ数が抑えられているミャンマー。3月下旬に初めての感染者が見つかって以降、ビザの発給停止、国際線の着陸禁止、夜間外出禁止令など、矢継ぎ早に対策を打ち出した。また、アウンサンスーチー国家顧問兼外相は、政府の会議をオンライン中継したほか、自ら手洗いの仕方を示す動画を公開するなど、今までにない取り組みを始めている。市民や企業経営者らが率先して医療機器や食料などを寄付する動きも顕著だ。ミャンマー語の日刊紙「ザ・ボイス」は、5月4日の社説で、こうした政府と国民の協力関係を「これまでになかったことだ」と評価している。

新型コロナ対策の会議をインターネット公開したアウンサンスーチー国家顧問兼外相(同顧問の公式フェイスブックから)

心の豊かさは社会資本

 ザ・ボイス紙は、初めて感染者が確認された3月下旬から5月上旬までの政府の対策を「完ぺきではないものの、評価できる努力をみせた」を総括した。ミャンマー政府にはこれまでパンデミック対応の経験がなかったうえ、政府の権限は限定的であることを指摘。特に、政府の対策について国民が協力していることを「慈愛の精神」と表現した。

 ミャンマーでは、市民が率先して貧困層に対して食料を援助したり、隔離されている人を援助するボランティアに乗り出すなどの動きが活発化。一方で、政商と呼ばれる財閥トップも、経営するホテルを医療施設として提供したり、医療機器を寄付するなどして、感染拡大のために私財を投じている。こうした動きを、社説は「金持ちは金を出し、市民はボランティアで貢献する。こうした心の豊かさという社会資本の強さが図らずも明らかになった」と表現している。

失われた政府と国民の関係が復活

 社説はまた、アウンサンスーチー国家顧問兼外相が、フェイスブックで国民に直接協力を呼びかけたり、自らが出席する対策会議を生中継したりと、これまでにない情報公開を進めたことを指摘。「指導者が国民を尊重するということが、長い間失われていた。今までなかった政治文化が誕生したということだ」と述べている。その上で社説は、国民の健康と経済の2つを守ることが試練だと述べ、この試練に打ち勝つためには、国民全員の協力が必要だと訴えている。

 ザ・ボイスの社説では、政府が国民と対話を進めている部分が強調されているが、一方で夜間外出禁止令や、5人以上の集会の禁止など、新型コロナ対策に軍事政権時代の手法を取り入れている部分があるのも事実だ。他の国でも強権的な手法と民主的な進め方とのバランスが議論されているが、ミャンマーでは今後どのように進んでいくのか、注目が必要だろう。

 

ミャンマー語原文:

http://thevoicemyanmar.com/editorial/41159-kar?fbclid=IwAR10g4XRuRotuK-DVfxQwGtTPq-qyKwHHz-U9WZrsWb6Lb7WluTS-vPp61Y

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