女性海外就労者の壊れた夢
バングラデシュの社説が「人道的見地から尊厳と人権を守れ」と訴え
- 2022/1/15
海外就労は、今や、途上国の人々にとって重要な収入の手段だ。男性だけでなく、女性たちも国外に職を求め、家族を母国に残して働いている。バングラデシュの英字紙デイリースターは、2021年12月28日の社説で女性の海外就労者をめぐる問題を採り上げた。
半数以上が契約を履行されず
社説はまず、海外で就労した女性たちの中に、さまざまな被害を受けて帰国する人たちがいることを指摘する。
「出稼ぎ先から自宅に戻ること自体は、本来、喜ばしい瞬間だが、バングラデシュ女性の海外就労者の中には、出稼ぎによって何も得られないばかりか、雇用主から暴力を振るわれ、身体に傷を負って帰る人も少なくない。彼女たちは家族をバングラデシュに残し、収入を得るために出稼ぎに行ったにも関わらず、すべてを失い帰国する。出稼ぎ先でどれだけひどい状況に置かれているかしばしば報道されるが、苦しみが法的に報われることはない」
社説によれば、2020年7月から12月にかけて実施され、2021年12月26日に公表された女性の海外就労者に対する実態調査によって、この事実が裏づけられるという。
その結果によれば、調査対象となった323人の海外就労女性のうち、55%が「望まないのに」あるいは「強制的に」帰国させられたと答えたという。また、1年間の契約期間を終える前に帰国させられた女性も22.6%に上り、身体的な暴力を受けた女性は38%、強制的な労働をさせられたのは52%に上ったという。さらに、賃金が支払われなかったり、借金を背負わされたりしている女性も多かった。
待ち受ける社会の偏見
帰国してからも、彼女たちに安住の地はない。「経済的に苦境に置かれる上、偏見や差別にもさらされる」と、社説は指摘する。同じ調査によれば、帰国後に仕事を見つけられなかった女性は60%に上り、52%が社会的な差別によって「周囲の態度が変わった」と感じているという。
「この問題が非常に深刻で、政府が早急に対応すべきだ。複数の政府機関が海外就労者に対するサービスを提供しているものの、省庁間の協力や調整ができていないことが問題だ、と指摘する国会議員もいる」
さらに社説は、バングラデシュのみならず、海外就労者を受け入れる側の国に対しても、「人道的見地から女性労働者の尊厳と人権を守る責任がある」と主張する。
女性就労者の働き先は、ハウスキーピングなど、家庭内での仕事が多く、雇用主の家という閉ざされた空間で理不尽な仕打ちを受けても、訴え出る場所もなければ、守ってくれる人もいないのだ。加えて、帰国後にも周囲の差別や偏見に苦しむのでは、救いがない。
バングラデシュに限らず、多くの途上国の女性たちが、同じような思いを抱えながら「海外出稼ぎ」によって家族を支えている。労働力の提供国と受け入れ国がともに同じテーブルに着き、話し合うための国際的な取り組みが必要だ。
(原文https://www.thedailystar.net/views/editorial/news/women-workers-return-crushed-dreams-2926866)