ミャンマー「1027」作戦を東南アジアはどう報じたか
中国の介入は混迷続く情勢の転機となるか

  • 2023/12/25

 2021年2月に国軍がクーデターにより実権を握ったミャンマーで10月27日、軍と対立する少数民族武装勢力や、連携する民主派勢力が国軍への一斉攻撃を開始した。報道によると、少数民族側が「1027作戦」と名付けたこの戦闘は、ミャンマー各地で拡大。国軍兵士の投降も相次いでいるという。

国軍と戦う人民解放戦線。ミャンマー北部ザガイン州近隣で2023年11月23日撮影 (c) ロイター/アフロ

「時限爆弾」を直視し対話と交渉の強化を
 タイの英字紙バンコクポストは、11月19日付紙面で「ミャンマーは時限爆弾だ」と題する社説を掲載した。
 社説はミャンマーの現状について、「悪い状態だったものが、今や最悪の状態になっている。人道危機への緊急対応が必要だ」と説明する。社説によると、ミャンマー西部のラカイン州では、国軍と少数民族武装勢力「アラカン軍」(AA)の戦闘が広がっている。また、北西部のチン州では、「チン民族戦線」(CNF)が戦闘を開始。北東部のシャン州では、「ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)」と「タアン民族解放軍(TNLA)」が軍の拠点を数十カ所占拠するなど、積極的な攻勢に出ている。
 中でもシャン州は、中国との国境地帯にあり、中国との貿易の拠点にもなっている。社説は、「ミャンマーの貿易の40%にあたる523億ドルがシャン州を経由していることを考えると、軍がこの州の支配を手放すことは経済の崩壊を意味する」と述べ、シャン州の重要性を強調。中国もこの情勢に強い関心を示し、事態に介入していると指摘した。
 そのうえで社説は、タイ政府がこの事態を「見て見ぬふりをしている」と批判する。プラユット前政権は、自身が軍出身で、クーデターにより政権を奪取したこともありミャンマー国軍を敵視することはなかった。タイとミャンマー両国が加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)が、ミャンマー国軍を正式な政権と認めず、会議への公式参加を拒否するなど厳しい姿勢で臨んでいるのに対し、プラユット政権はミャンマー国軍との直接対話を続けていたと指摘する。
 他方、現在のセター政権について、社説は「ミャンマー問題から一定の距離を取ろうとしている」と指摘した上で、次のように述べる。「いくら距離を置いたとしても、問題が消えるわけではない。タイはミャンマーと長い国境を接しているという厳然とした事実があり、ミャンマー情勢が悪化すれば、難民はタイへと逃れてくる。すでに多くの難民がいるこの国へ」
 そして社説は、次のように警告している。「タイ政府は、ミャンマーがぐつぐつと煮える大鍋ではなく、時限爆弾であることを認識する時がきている。ASEANの努力、すべての関係者による対話と交渉という努力を強化すべきだ。さもなければ、この地域の平和と安定は危機に瀕するだろう」

「ASEAN5項目合意にこだわらず中国の巻き込めを」
 12月までASEANの議長国を務めるインドネシアでは11月23日、「中国を巻き込んで事態の解決を」と題する社説が英字紙ジャカルタポストに掲載された。
 社説は、ASEANとミャンマー軍部が2021年、事態改善に向け暴力の即時停止などで合意した「5項目の合意」が履行されないままだと指摘。「一つだけの政策に頼っても何の進展もみられない。ASEANは他の道を模索すべきだ」と強く訴えた。そのうえで、中国の習近平国家主席と良好な関係を築いているインドネシアのジョコウィ大統領が、中国を巻き込んでミャンマー国軍への働きかけを行うことを提案する。「ミャンマーが危機から脱するために中国政府に関与を求めることは、まったく見当はずれな考えだとは言えない。ミャンマーにおける中国の影響力は、誰が権力を握っているかによらず圧倒的であるからだ」

「中国の関心は自国民の生命と財産」
 シャン州における治安の悪化は、ミャンマー国軍のみならず、中国側にとっても痛手になる。タイ北部に拠点を置くミャンマーの民主派メディア、イラワジも11月7日付の社説で「1027作戦」について取り上げ、「民族武装組織の連合体がシャン州北部の主要な国軍拠点を占拠した。また、ミャンマーと中国を結ぶ主要な交易路や、いくつかの重要な国境の町、そしてミャンマーと中国を結ぶ高速道路を同時に制圧した」と、その戦果を伝えている。
 一方、中国はこうした状況を受けてミャンマーに対し、「国境沿いの安定を維持し、国境に住む中国人の生命と財産を守り、中国人職員の安全を確保のために努力するよう求めた」という。

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 国連人道問題調整事務所によると、ミャンマーでは1027作戦以降、11月22日までに市民200人が犠牲となり、新たに発生した避難民は33万5000人に上るという。被害をこれ以上拡大しないために、迅速かつ現実的な取り組みが求められている。

(原文)
ジャカルタポスト:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2023/11/23/ris-last-myanmar-initiative.html

バンコクポスト:
https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2687769/myanmar-still-a-ticking-time-bomb

イラワジ:
https://www.irrawaddy.com/opinion/editorial/decision-time-for-myanmars-junta-who-will-replace-min-aung-hlaing.html

 

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