ミャンマーの運命は、正義と正当性を信じる人々が作る
民主活動家ミンコーナイン氏が国民防衛隊の新設を語る

  • 2021/5/16

2020年11月のミャンマー総選挙で当選したにも関わらず、2021年2月1日のクーデターによって追放された元議員らが2021年4月に樹立した「挙国一致政府」(NUG)は5月5日、軍事政権による国民への暴力行為と殺りくを防ぐために「国民防衛隊」の設立を発表した。翌6日、NUGのアドバイザーである民主活動家のミンコーナイン氏は、米メディア「ラジオ・フリー・アジア」の独占インタビューに答え、新たな民兵組織や「市民的不服従運動」(CDM)の最新状況、教育機関の再開に向けた軍部の動きなどについて語った。同氏は、1988年の民主化運動を率いた学生グループのリーダーであり、平和的にデモに参加していた人々や民間人を数百人単位で殺害した軍事政権のことを「血に飢えている」と声高に批判してきた人物だ。

(c) Discover Land / Wiki Commons

国民防衛隊の結成

──新たに結成された国民防衛隊について教えてください。

 国民防衛隊の結成は、NUGの国防省が発表しました。連邦軍結成の構想自体はすでに市民に広く知られていますが、一朝一夕にかなうものではありません。連邦軍とは、すべての民族武装グループの部隊を統合してはじめて実現するものだからです。

 我々は、こうした軍事組織が国民を保護し、安全を守るために存在するものだと繰り返し述べてきました。NUGとしてもそう明言しています。すでに軍事訓練を終えた人々もいれば、これから訓練を受ける人々もいます。民族武装グループの支配下にある「自由な領域」で多くの人々が訓練を受けているのです。

 これは、NUGが主権政府としての要件を満たしていることを示すものでもあります。NUGは自ら管理する領土と国境を有しており、居住する人々と、彼らを守る治安部隊を有しています。多くの若者が軍事訓練に参加している「自由な領域」には、必要なものがすべてそろっています。国際的な基準にのっとっても、NUGは政府としての条件を満たすでしょう。
 NUGの強みは、住民から支援を得ている点にあります。結局のところ、勝利は国民からの信頼と精神にかかっており、この国の運命は、正義と正当性を信じる人々によって、迅速かつ効果的に形作られていくものなのです。

人々が市民不服従運動(CDM)に込める思い

──軍事クーデター発生から3カ月以上が経ちました。国民の抵抗と軍事政権の弾圧をどう評価していますか?

 人々の抵抗は、クーデターから90日後にはゲリラ的な抗議行動に変わりました。それが現実です。軍事政権による暴力的な取り締まりや逮捕、拷問、殺人などが原因です。

 しかし、我々は、革命を継続しなければならないということを学びました。人々の運動は、いまや軍事評議会とはっきり対立しています。ゲリラ的な抗議活動が、いつ本格的な革命運動に発展してもおかしくありません。我々はこの数週間、抗議行動をする人々によっていつでも通りを埋め尽くすことができることを示し続けてきました。和解は決してあり得ません。

 また、これまで繰り返しお伝えしている通り、CDMとは、決して単に従業員が仕事に行かないということではありません。税金を払わない、宝くじを買わない、軍の管理下にある企業の製品をボイコットする、といったことも含まれるのです。軍の収益につながる活動を一切行わないことがCDMなのです。

 CDMに参加する人々への迫害は激化しており、我々はやりかたを見直す必要に迫られています。その一方で、離反してCDMに加わる警察や兵士も後を絶たず、CDMの運動はさらに強まっています。たとえばチン州では、保健・教育部門の職員1万5,000人がCDMに参加していますが、うち250人は元警察官や元兵士です。行政機関の上級職員も約200人加わっています。

 次に、国際社会の支援に関して言うなら、我々は国民が抵抗し、多くの犠牲者が出たことを受けてNUGを結成しました。決してアイデアが空から降ってきたわけではありません。また、民族武装集団とも合意を締結し、協力してきました。今後、なすべきことはまだまだたくさんあります。

 たとえば、銀行員が参加した金融セクターのCDMは非常に成功しています。今後、銀行が再開されてもこれまでの損失は取り戻せないでしょう。再開されれば、人々は一斉にお金を引き出そうとするからです。先日、新たな口座開設を呼び掛けるアナウンスがありましたが、これは国軍が深刻な資金不足に陥っている表れだと言えます。

 また、国軍は、東南アジア諸国連合(ASEAN)が4月24日にインドネシアの首都ジャカルタで開催した国際会議を自分たちの都合のいいように利用しようとしています。しかし、ミャンマーから参加した国軍司令官は国家元首ではなく「軍の最高司令官」と呼ばれ、車両にミャンマー国旗が掲げられることもなかったことは、特筆すべきでしょう。

──CDM参加者への支援については、どのようにお考えですか?

 我々には、CDMに関する詳細な記録があります。2020年11月の選挙で議席を獲得した議員らが臨時政府として連邦議会代表委員会(CRPH)を設立して以来、CDMに参加した公務員の署名を保管いているからです。CRPHのウェブサイトには、活動の記録がすべて残っています。

 たとえばカヤー州では、数百人もの警察官がCDMに参加しています。また、送金団体ファーム・ハンズの記録によれば、この3カ月間の送金額は5億チャット(約31万7,000米ドル)に上り、多くのグループがこの活動を支援しています。

 我々としても、CDMに参加している公務員をどのようにサポートすべきか検討を続けています。当局から脅しを受けたり逮捕されたりして仕事を辞めようとする者も後を絶ちません。法律上、仕事を辞めたことを理由に逮捕することはできません。辞めた人には保障すべきだと我々は考えています。民政を取り戻せれば、彼らは再び職場に戻れるでしょう。NUGはそれを保証しています。

── 人々が抵抗運動を続けていることで、国軍はどのように苦戦しているでしょうか。

 ミャワディ銀行のような軍系の銀行からお金を引き出そうと人々が殺到しているのは、なぜだと思いますか?なぜ、銀行の前に長蛇の列ができているのでしょう?それは、人々が銀行を信用していないからです。金融部門に問題があるということを理解しているからこそ、人々は政権を倒す戦略の一環として現金を引き出しているのだと私は考えます。

 さらに、先ほども触れた通り、軍の収入につながることを嫌って人々が宝くじを買わなくなっていることも抵抗運動であり、CDMの一つと言えます。

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