緊迫する中東情勢 火の粉は東南アジア諸国にも
イランとイスラエルの応酬に高まる懸念

  • 2024/5/17

 緊迫化の一途をたどる中東情勢は、遠く離れた東南アジア諸国にもさまざまな悪影響をもたらし、各国で懸念が高まっている。フィリピンとインドネシアの新聞の社説から紹介する。

イランがイスラエルに向けて弾道ミサイルを発射した瞬間 (2024年4月14日)(c) MEHR News / Wikimedia Commons/

脅威にさらされるフィリピン人船員の生命

 フィリピン・デイリー・インクワイアラー紙は4月26日付で「トラブルの多い海域」と題した社説を掲載。ホルムズ海峡付近での治安の悪化にフィリピン人が巻き込まれる事態が続いていることを論じた。

 社説によると、4月13日にホルムズ海峡でイランに拿捕されたコンテナ船の乗組員25人のうち、4人がフィリピン人だったという。3月初めには、フーシ派が貨物船に対艦ミサイルを撃ち込み、2人のフィリピン人乗組員が死亡している。また1月11日には、イラン海軍が石油タンカーを拿捕。18人のフィリピン人乗組員のうち6人は、今もイランの拘束下にある。さらに、昨年11月にフーシ派に拿捕された自動車運搬船のフィリピン人乗組員17人も、いまだに拘束されたままだ。

 社説によると、世界の海上で働くために送り出されるフィリピン人船員の数は、毎年約40万人に上るという。「フィリピンは世界の海上労働ニーズの25%以上を供給しており、このような事件は、彼らの生命と生活にとって憂慮すべき脅威だ」と、社説は指摘する。

 こうした事態を受け、フィリピン政府は船会社側に対し、船員に十分な情報を与え、戦地へ向かう船に乗ることを拒否できる仕組みや、船員の自由な決断を尊重することを求めているという。しかし、船員たちは「競争の激しい労働市場のブラックリスト」に載ることを恐れ、「この選択肢を見送るだろう」と、社説は言う。

 フィリピンから遠く離れた中東の危機が、確実に、そして直接的にフィリピン国民の生命を脅かしている。

1万キロ離れたインドネシアでも高まる経済不安

 一方、インドネシアの英字紙ジャカルタポストが懸念するのは、自国の経済の悪化だ。4月17日付の「イスラエルの対応を予測する」と題した社説では、原油価格の高騰や、世界のサプライチェーンの混乱について論じている。

 社説は、4月13日のイランによるイスラエルへの攻撃について「多くの人々は中東での戦争がエスカレートし、第3次世界大戦の火種になるのではないか、と恐れた」とする。イラン側は「4月1日にイスラエルがシリアで行った攻撃への報復であり、紛争をエスカレートさせる意図はない」と説明したが、社説は「国際法を無視する傾向が強いライバル国同士の衝突」であるとして、事態が悪化する懸念は払拭できない、と警戒感を示した。

 そして、今回の中東危機がインドネシアに与える影響について、「台風の目から1万キロ離れていても、原油価格の高騰や、さらなるグローバルサプライチェーンの混乱によるコスト高から経済が立ち直れないのではないか」と、懸念する。

 社説によれば、インドネシアのジョコ大統領は閣議を招集し、「自制と緩和を求める外交努力を強化するよう」指示したという。

 世界最大のイスラム教徒を抱えるインドネシアは、イランとも良好な関係を保っている。社説は「中東での紛争激化に伴うリスクにさらされるインドネシアが、緊張を和らげるために何かできるとすれば、イランとの良好な関係を活用することだ。しかし、今後、もしもイスラエルがイランに報復することになれば、事態は振り出しに戻るだろう」と、情勢の不安定さを案じている。

(原文)

フィリピン:

https://opinion.inquirer.net/173238/troubled-waters-2

インドネシア:

https://www.thejakartapost.com/opinion/2024/04/17/anticipating-an-israeli-response.html

 

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