フィリピンが輸入ワクチンの非課税を議論
民間セクターの自社負担を容認するよう地元紙が主張
- 2021/1/8
新型コロナのワクチンの開発が次々に進められるのに並行し、その入手方法や接種事業の在り方が各国で注目されるようになった。2020年12月28日付のフィリピンの英字紙インクワイアラーは、社説でこの問題を採り上げた。
政府事業を待たず社員への接種を企業が提案
フィリピンの2020年12月末までの新型コロナ感染者は約47万2000人で、死者は9000人を超えている。東南アジアでも感染者が多い国の一つだが、1日の感染者数はピークを記録した8月の6000人以上から、900人前後にまで落ち着いている。
また、フィリピン政府は12月29日には、新型コロナ変異種の感染が確認された日本を含む20カ国・地域からの外国人の入国を1月15日まで禁止すると発表した。国内では現在も都市間の移動制限などを続けているが、水際対策も強化することによってさらに感染の抑え込みに取り組む考えだ。
こうした状況下で、次の大きな課題はワクチンである。
社説は、「新型コロナのパンデミックにより打撃を受けた社会や経済の回復に重要な役割を果たすのは民間セクターだ」として、フィリピン送電会社(National Grid Corporation of the Philippines)が提出したワクチンに関する提言を政府が真剣に検討すべきだと訴えた。
同社の提言は、新型コロナのワクチンを国の取り組みを待たず自社負担で購入し、自社社員に接種するというものだ。さらに、購入にあたってワクチンを非課税にする法律を制定するよう国会議員たちに働きかけているという。
社説によると、同社のアントニー・アルメダ社長は、「自社負担でワクチン接種を実施することにより、多くの企業がより早く通常の状態に戻ることができ、経済の回復に貢献できると思う」と、話しているという。社説は、「同社には5000人の従業員がおり、国全体の電力供給に重要な役割を果たしている。他にも、医療従事者らを優先する政府のワクチン事業を待つより、自社の従業員のために一刻も早くワクチンを入手したい企業経営者は多いだろう」と指摘し、次のように期待する。
「民間セクターが自己負担でワクチンを入手することを認めることで、結果的に政府のワクチン備蓄量も高まり、失業者や貧困層など、より多くの人々に行き届くことになるだろう」
寄附より機能性に期待か
社説は、政府が公務員を大切にするのと同じように、民間セクターでも同様のイニシアチブを認めるべきだ、と主張する。
「今、この段階で最も緊急的で重要なのは、各セクターの上層部がそれぞれの従業員たちに確実にワクチン接種を行うことだ。政府は、新型コロナワクチンの輸入にあたっては非課税とし、民間セクターがワクチンを自己負担で入手できる適切なインセンティブを与えるべきではないか」
新型コロナのワクチン購入にあたっては、先進国がワクチンを独占することがないよう国際的な共同購入の仕組みも設立されている。しかし、その上限は人口の20%とされており、すべての人々にワクチン接種が保証されているわけではない。
そうした中、民間セクターが自ら購入することが、感染予防にも、国家財政の負担軽減にもつながる、というのが社説の論理だ。政府が、ワクチン購入のために民間企業から「寄附」を募っている国もあるが、社説は、「政府に金を集めても、その官僚主義によって迅速なワクチンの供給が妨げられる」との立場だ。民間セクターの自助に頼る形にはなるが、きわめて現実的な手法の一つではないだろうか。フィリピン政府の判断に注目したい。
(原文: hhttps://opinion.inquirer.net/136498/allow-tax-free-vaccine-imports)