日本とASEAN、東南アジアの安全保障で協力強化
中国への脅威を背景に日本の軍事援助に高まる期待 

  • 2024/1/26

 日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の友好50周年を記念した特別首脳会議が2023年12月17日、東京都内で開かれた。首脳会議には日本のほか、ミャンマーを除くASEAN9カ国と、加盟が内定している東ティモールが参加。日本とASEANはこれまで経済を中心に協力関係を築いてきたが、今後、安全保障についてどこまで連携を強化していくか、会議の行方が注目されていた。会議では「信頼のパートナー」と題した共同声明が採択され、海上安全保障の強化についても言及された。

日本とASEANの特別首脳会議において、共同声明の発表後、握手するインドネシアのジョコ・ウィドド大統領と岸田文雄首相(2023年12月17日撮影) (c) ロイター/アフロ

かつての侵略者、日本による軍事援助「OSA」始動

 シンガポールの英字紙ストレーツタイムズは、2023年12月20日付の社説で「日本とASEANはより緊密な関係を」と題する記事を掲載した。

 社説はまず、両者の経済的な関係について「経済は安全保障の基盤」だと述べたうえで、「日本とASEAN諸国がデジタル経済とグリーン経済に力を入れることには、将来性がある」と評価。さらに、双方が協力できる分野として「相互運用可能なデジタル経済システム」と「アジアの脱炭素化」を挙げ、デジタルと環境の持続可能性を促進するために重要な分野だ、と強調した。

 また、日本政府が新たに立ち上げた、国同士の安全保障能力を向上させる無償資金協力である「政府安全保障能力強化支援(OSA)」に触れ、「日本の政府開発援助(ODA)と対をなす軍事援助であるOSAは、志を同じくする発展途上国の友好的な軍が地域の安全を守る能力を高めるのに役立つだろう」と、期待を示した。社説は、「かつてアジアの侵略者だった日本が、いまや地域の平和、安全、安定、繁栄を担う支援者となったことは、多くのことを物語る」と述懐。第二次世界大戦下で占領や虐殺など、日本によって甚大な被害を受けた東南アジア諸国が、日本との間に新たな関係を確立しつつあるという現状を改めて示した。

中国との緊張高まるフィリピン 日本に寄せる期待

 安全保障における協力関係をより切実に必要としているのが、フィリピンだ。フィリピンは、南シナ海の領有権を争う中国との間で緊張が高まっている。岸田文雄首相は2023年11月に首都マニラを訪問し、自衛隊とフィリピン軍の相互往来をスムーズにする「円滑化協定(RAA)」の締結に向け交渉に入ることでマルコス大統領と合意した。また、OSAの案件として、フィリピン海軍に沿岸監視レーダーシステムを供与することを決めている。

 フィリピンの英字紙デイリーインクワイアラーは、2023年12月26日付で「待望の日本との協定」と題した社説を掲載した。

 社説は、「マルコス大統領が東京でRAAについて語った時、大統領の声には切迫感が漂っていた」と記す。「第二次世界大戦では、フィリピンは帝国日本の侵略に遭った。そのような悲惨な歴史があるにも関わらず、フィリピンは現代の日本に信頼を見出した」

 フィリピンは、中国との緊張関係の高まりに危機感をあらわにしている。社説は「同盟国に頼らずして誰に頼ればいいのか。国連は、ウクライナやイスラエルで紛争が勃発するのを防ぐことはおろか、紛争がエスカレートすることを食い止めることもできない。内政不干渉の原則に縛られたASEANは、さらに無力だ」として、フィリピンが米国のみならず、その米国の同盟国である日本にも期待を寄せていることを指摘している。

ASEANは団結して大国との交渉力を高めよ

 一方、ASEANの有力国であるインドネシアは、南シナ海問題については「まずはASEANが団結する必要がある」と訴え、焦りを募らせるフィリピンとは対照的な姿勢を示している。ジャカルタポストは、2023年12月7日付で「南シナ海問題におけるASEANの団結」と題した社説を掲載した。

 南シナ海問題では、フィリピンと中国だけでなく、マレーシア、ブルネイ、ベトナムも領有権を主張しており、ASEANの会議でも毎回協議されている。しかし各国の思惑はそれぞれに異なり、足並みがそろわない上に、事態は刻々と変化してきた。社説は「ASEANが中国に対して団結を示す姿はほとんどみられない」と冷静に指摘する。

 社説によれば、インドネシアも南シナ海の南端に位置し、漁場をめぐって中国との対立を抱えているが、「インドネシアと中国は、友好的に対立を管理してきた」という。社説は次のように主張する。「資源が豊富なこの海域で、大国間の対立が。ASEAN各国は、それぞれの国益の違いを脇に置き、一致団結して対処する努力をするべきだ。大国を相手に交渉力を高めるには、ASEANの団結が不可欠なのだ」。

 

(原文)

シンガポール:

https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/japan-and-asean-must-draw-even-closer

フィリピン:

https://opinion.inquirer.net/169322/a-long-awaited-pact-with-japan

インドネシア:

https://www.thejakartapost.com/opinion/2023/12/07/asean-unity-on-scs.html

 

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