ミャンマー軍部、民主活動家ら4人を処刑
独立系メディアのイラワジが「許されざる行為」と強く抗議

  • 2022/7/27

 ミャンマーの国営紙は7月25日、クーデターで実権を握ったミャンマー軍によって、アウンサンスーチー氏の側近であるピョーゼーヤートー氏(41)ら4人の死刑が執行されたと報じた。地元の報道によると、ミャンマーで政治犯の死刑が執行されるのは1976年以来のことだという。隣国タイを拠点に、ミャンマー国内の民主化運動を支持する立場から情報発信を続けている独立系インターネットメディア「イラワジ」は、7月25日付けで社説を掲載し、「ミャンマー軍による死刑執行は許されざることだ」と、深い憤りとともに伝えた。

ネピドーの国会議事堂内をアウンサンスーチー氏と共に歩くピョーゼーヤートー氏(2016年3月11日撮影)(Z. Aung/VOA News)

遺体や遺灰の引き渡しも拒否

 社説は、死刑が執行されたのは7月23日で、絞首刑だったと伝えている。家族には何の知らせもなく、執行後も家族による遺体の引き取りも認められず、葬儀ができない状態であるため、遺族の中には事実を受け止められない人たちもいるという。

 さらにイラワジは同じ7月25日付で、ピョーゼーヤートー氏の76歳の母親が、死刑執行の前日にビデオ電話で息子と交わした会話について語ったインタビュー記事も掲載している。その記事によれば、ピョーゼーヤートー氏は母親に、書籍と辞書とメガネを差し入れてくれるように依頼したという。つまり、この時には本人も母親も翌日に死刑が執行されることを全く知らされていなかったことが分かる。そのうえ、遺体や遺灰を引き取ることさえ拒否された、と母親は告白している。

 2021年2月に国内を支配したミャンマー軍について、社説は「5400万人の国民が、皆、彼らによる支配を受けることを心底拒絶し、当初は平和的な抗議運動で、その後、武力による闘争を開始した」と振り返った上で、次のように続ける。

 「クーデターから1年半近くが経つ今も、軍は国内を統制できておらず、クーデターは失敗だったという事実と恥を世界にさらしている。そこに来て、今回の死刑執行だ。ミャンマーは今後、ますます血塗られた道を歩むだろう」

「今、行動を」

 4人に死刑判決が下されたことをミャンマー軍が6月に公表した時、国際社会はこぞって思いとどまるように働きかけた。東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国であり、軍に近いとされるカンボジアも、そして中国も、死刑には反対し、執行しないように伝えたと報道される。

 ASEANはクーデター以来、ミャンマー軍をミャンマーの正式な代表として認めておらず、事態打開のためにカンボジア外相らを特使に立ててミャンマー軍との交渉に当たらせてきたが、事態は一向に進展していない。4人の死刑判決についても、「もし執行すれば、ASEAN加盟国やパートナー国の間に深刻な懸念を引き起こすだろう」として、強く中止を求めていた。

 「にも関わらず死刑が執行されたという事実は、ミャンマー軍が国際社会の声などなんら気に留めていないことを示すものだ」と、社説は指摘する。

 「西側諸国、なかでも米国は、これを機に軍への非難と働きかけをもっと厳格化する方策をとるべきだ。ASEANの和平工作は1年以上にわたって失敗しており、無力さをさらけ出している。もはやその影に隠れているべきではない。ミャンマーに対する措置は、経済制裁や武器輸出の禁止だけでは不十分だ。ミャンマー国民が軍と対峙するために必要としている支援を具体的に行うべきだ」

 昨年2月1日にミャンマー軍が実権を握って以降、この国で命を落としたのは4人だけではない。社説は、「すでに2100人を超える国民が軍に抗議したかどで殺害されている」と指摘した上で、世界に向けてこう訴えている。

 「ミャンマー国民は、単なるお悔やみや軍批判の言葉にはもう飽き飽きしている。もしも世界がさらなる暴力行為や流血を見たくないと本気で思うなら、今、行動してほしい。この人間とは思えない制服を着た者どもが権力を握っている限り、ミャンマー国民には闘いを放棄するという選択肢がないのだから」

 

 (原文)

https://www.irrawaddy.com/opinion/editorial/myanmar-juntas-executions-unforgivable.html

https://www.irrawaddy.com/in-person/interview/executed-myanmar-democracy-activists-mother-recalls-last-meeting.html

 

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