中国、コロナからの経済再生に失敗か
中国経済の低迷に左右される東南アジア諸国の現状
- 2023/7/11
中国が、新型コロナの感染拡大などにより低迷した国内経済の回復に苦戦しているようだ。さらに、米中対立のさなかに起きたロシアによるウクライナ侵攻、モディ首相の訪米にみる米印の接近など、中国は国際的にも厳しい局面に立たされつつある。
「暗いデータ」が示す事実
シンガポールの英字紙ストレーツタイムズは6月9日付の紙面に「中国の不安定な経済には助けが必要だ」と題した社説を掲載し、次のように述べた。
「厳しいゼロ・コロナ対策による活動制限を終えた中国では、今後、経済が力強く回復することが期待されていた。しかし、最近の経済データを見ると、その予想は裏切られているようだ。中国が経済を軌道に乗せるためには、依然として厳しい課題があることがうかがわれる」
そのうえで、社説はいくつかのデータを引用する。まず、2023年第1四半期の海外直接投資は、前年同期と比べ34%減少した。これは、2020年の同じ時期に比べると、約3分の1の水準に過ぎない。また、同年5月の輸出は、前年の同月に比べ7.5%減となっている。特に、アメリカ、日本、東南アジアなど、中国にとって主要な市場向けの輸出が二桁減となっているという。他方、中国国内では、住宅着工件数も低迷している。レストランや観光などサービス業への個人消費は比較的好調だが、内需は依然として低調だという。
こうした「暗いデータ」を踏まえ、社説は「政府が目標とする国内総生産(GDP)成長率5%の達成は難しいかもしれない」と指摘。さらに、「パンデミック後の中国の立ち直りが弱いという事実は、中国がかつて想定されていたほどには地域の成長エンジンになり得ないことを意味する。特に、5月に半導体の輸入が15%減少したという事実は、シンガポールや韓国、台湾のような大規模なエレクトロニクス部門を持つ国にとって大きな懸念材料だ」と述べる
また社説は、今後、低迷する経済の解決に向けて重要なポイントとなるのは、中国政府による対応だと指摘。「現在の国際環境では輸出を増やすことは厳しい」としながらも、「カギは国内経済の回復にある」と述べ、「政府による政策の性質と規模が経済再生を左右する」との見方を示している。
中印、二つの隣国との関係に揺れるネパール
停滞する中国と国境を接するネパールでは、期待されていたような対中関係が結べないことにいら立つ声もあるようだ。ネパールの英字紙カトマンドゥポストは、6月19日付の紙面で、「中国に対する困惑」と題する社説を掲載した。
社説は、ネパールにとっての中国を「隣接する二国の一つであり、インドを経由しない貿易・交通ルートをネパールに与えてくれる国であるともに、技術や農業の近代化、インフラ整備などの分野で、多くのことを教えてくれる」だと評したうえで、「今後もネパールにとって重要な外国投資の供給源となり得る」と、期待を寄せる。そのうえで、現実には両国間に関係が構築されていないことを嘆く。
社説によれば、ネパールと中国は貿易・通貨協定を結んでいるものの、交流は発展せず、経済的な利益ももたらされていないという。
「ネパールはインドへの依存を深める一方、中国とのつながりは弱まりつつある。すでに、燃料から果物まで、あらゆるものをインドに依存しており、大型水力発電プロジェクトもインド業者に引き渡された」
この背景として社説は、ネパールの政治指導者が対中関係を深めることに慎重な姿勢を崩さないことを挙げる。そのうえで、「インド国境が新型コロナにより封鎖された後、ネパールの政治指導者たちは、小さな隣国を救いに来てほしいと中国に懇願したにも関わらず、封鎖の記憶が薄れ始めるやいなや、そうした事実は都合よく忘れた」と指摘し、指導者たちの一貫性のなさを批判した。とはいうものの、両国間の経済協力が深まらない現状には、思うように回復しない中国経済の停滞もまた、暗い影を落としているのかもしれない。
(原文)
シンガポール:
https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/china-s-faltering-economy-needs-help
ネパール:
https://kathmandupost.com/editorial/2023/06/19/confused-on-china