米中の覇権争いで岐路に立つスリランカ
地元英字紙の社説に見る米大統領選への失望と注目
- 2020/10/29
11月3日の米国大統領選を目前に控え、米国のポンペオ国務長官は10月27日、スリランカを訪問した。スリランカの英字紙デイリーニューズは、訪問前日付の社説で米大統領選を採り上げた。
最も醜い選挙戦
ポンぺオ国務長官がスリランカを訪問することについて、在コロンボ中国大使館は10月26日、「米国が国務長官を派遣し、中国とスリランカの関係に干渉しようとしていることに反対する」との声明を出した。米国は中国がインド洋地域で勢力を広げようとしていることを警戒しており、ポンペオ氏の訪問の狙いは中国をけん制するためではないか、と指摘されていることを受けたものと見られる。
社説は、ポンペオ氏の訪問によって「高まりつつある地政学的な緊張感と、スリランカがインド洋地域で果たす重要な役割が明らかになる」と指摘しているものの、米中対立の中でスリランカがとるべき立場については言及していない。理由の一つに、米大統領選が迫っていることが挙げられる。トランプ政権が続投するのであれば従来路線が続くと考えられるが、もしバイデン氏が当選すれば、外交方針も手腕も未知数だからだ。
この日の社説が米大統領選について触れるにとどまっているのも、そのためだ。社説はまず、「来たる米大統領選は、さまざまな理由からこれまでとは全く異なる様相を呈している」と指摘し、次のように述べる。
「今回の選挙戦では、多くの評論家が指摘している通り、候補者同士が“素手で殴り合っている”ような、史上最高に激しく、醜い選挙ャンペーンが展開されている。選挙後に深刻な暴力や暴動が起きる可能性も指摘され、相当な警戒態勢が整えられつつあるのも、前例のないことだ。このような事態は途上国で選挙が行われた際には時折見られたが、そのたびに世界の民主主義の守護役である“アンクル・サム”を自認してきた米国が暴力を非難してきたものだった」
語られぬ外交政策
社説はさらにこう続ける。
「そして、討論会に臨んだ候補者同士がこれほど行儀が悪いのも、間違いなく史上初だ。これまでこの討論会は、民主主義の伝統にのっとり、礼儀正しく、エチケットを守って実施されてきたが、今回は違った。嘆かわしいレベルの不作法な応酬が続いた上、2回目の討論会は中止された。3回目は幾分マシであったものの、人種差別がもたらした米国政治の深い亀裂を映し出すものだった」
「民主主義の警察」を自認し、ふるまってきた米国への皮肉も込もった表現だが、暴力行為やデモが相次ぐ米国社会の現状を、今、多くの新興国が同じ思いで見つめていることだろう。どちらの候補者が選ばれるにせよ、この騒動の果てに就任した次期大統領が、これまでのように国際社会でスーパーパワーを行使できるかは不透明だ。
社説では、両候補者の外交政策については「さほど多くは語られていない」と指摘した上で、次のように述べる。
「もっとも、バイデン候補は、トランプ大統領が中国とロシア双方と取引し、利益を得ているため、両国への外交政策も詰めが甘いと批判し、自分は中国の覇権拡大により厳しく対応すると表明している。他方、トランプ大統領は、バイデン候補がオバマ政権時代に副大統領を務めていた時、特段、何の政策も実施しなかったと批判している」
足元が揺らいでいる大国の米国と、超大な経済力および軍事力に物言わせ影響力を拡大している中国。その覇権争いの渦中にあるインド洋地域の各国は、どんな道を選ぶのか。世界が「醜い」米大統領選に落胆しつつも、注目している。
(原文: http://www.dailynews.lk/2020/10/27/editorial/232402/us-presidential-election-race/)