新型コロナ対策 ベトナム・ホーチミン市のいま
水際対策のその先に、2週間の外出自粛措置始まる

  • 2020/3/30

 3月8日、国際婦人デー。ベトナムでは例年、カップルや夫婦だけでなく友達同士でも、女性にご馳走したり花を贈ったりと、街が華やぐ1日となる。今年は日曜日ということも相まって、賑わいも増すかと思いきや、ホーチミン市内は寂しいものだった。筆者は友人と晩御飯に出かけたが、レストランも客足がまばら。奇しくも、それまで約3週間にわたって国内で新たな感染が報告されていなかった記録が、その週末にイギリスからの帰国者の感染が判明したことでもろくも破られることになったのだ。これを機に、政府や地元当局は一層の対策の強化を迫られている。

スーパーのレジに並ぶ人々(筆者撮影)

テト(旧正月)のような静けさ 

 ホーチミン市では、3月28日から「外出自粛要請」がスタートした。具体的には、スーパーや薬局、ガソリンスタンドなど、生活に不可欠なサービス以外は軒並み休業。レストランは、デリバリーや持ち帰りは認められるものの、1つの部屋で20人以上が集まる会議や行事の禁止に、職場や学校、病院でも、10人以上の集まりを禁じる措置が開始された 。また、公共の場所では2メートル以上の間隔を取るよう求められるとともに、国内移動に際しては所定の健康申告を行うことも定められた。さらに、デマを流したり、商品の売り惜しみをしたり、価格を吊り上げたりするといった行為に対しては、処罰されることもあるという。

 今回の自粛要請の前から、食料品や生活用品の買い物や仕事など、外出を最低限にとどめてきた筆者の自宅にも、「不要不急の外出をしない」「公共の場所でマスク着用の厳守」など、市の人民委員会が推奨する「6カ条」が記されたチラシが配布された。市内の道路は、朝晩のラッシュアワーの時間帯にもバイクが溢れることはなく、まるで旧正月中のような静けさが続いている。

ホーチミン人民委員会が各戸に配っている「6つの予防策」のチラシ(筆者撮影)

急転直下の水際対策と国内の予防措置 

 約9,000万人の人口を擁するベトナムで1月末に初めて確認された新型コロナの感染者は、中部を訪れていた中国人旅行者だった。これを受けたベトナム政府の決断は、かなり素早かった。感染者が急速に増えている地域からの航空便の着陸を制限するとともに、ビザの発給制限にも踏み切った。

3月中旬以降、海外からの入国者は全員が軍の施設などに14日間隔離されている(地元有力紙「タンニエン」電子版の3月23日付記事より)

 さらに、国内の感染者が30人に満たない段階で、ホーチミン市やハノイといった主要都市部で保育園から大学まですべての教育機関と語学学校、そして塾に対し休校措置を決定。いずれも、1月末に旧正月休みに突入して以来、今に至るまで、2カ月以上、閉鎖が続いている。

 次々と繰り出された対応策の甲斐あってか、2月中旬から3週間ほどは、新たな感染例の報告もなく、有力各紙は「われわれは初期段階で感染を食い止めた」と高らかに報じた。

食料品の買いだめが一時的に発生、現在は落ち着いている(筆者撮影)

 ところが、冒頭の通り、3月初旬にロンドン発ハノイ行の飛行機で帰国したベトナム人女性の感染が確認された後、彼女の家族や濃厚接触者、そして、同じ便に搭乗していた乗客など、二桁レベルで感染が発覚し、状況が一変する。その報道がなされた週末、筆者の自宅近くの大型スーパーは普段よりかなり混雑しており、レジには長蛇の列ができており、旧正月前の買いだめ風景のようだった。順番が来るまで30分あまり、周囲の客のカゴをのぞかせてもらうと、インスタントラーメンや冷凍食品のほか、常温保存できるミルクや缶詰が目立った。

 とはいえ、日本と違い、トイレットペーパー類をまとめ買いする人の姿はあまり見かけない。都市部以外では、まだまだトイレの後に水で洗う習慣が残っている地域も多いベトナムでは、暮らしの中での「紙」の優先度がそれほど高くないのかもしれない。

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