国道1号線をゆく
ホーチミン〜プノンペン 過去・現在・未来の姿に想いを馳せながら

  • 2019/7/10

ベイブリッジばりの「つばさ橋」

 カジノ街にあるドライブインで休憩を取ってから30分ほど走ると、のどかな風景が広がる。ところどころ道路の修復工事が行われているが、概ね快適な道中で、草を食む牛の群れや、湖に自生するハスの花などに出会えて、微笑ましい。

カンボジア側の国道一号線上にあるつばさ橋の上にて。小雨にも関わらず、写真撮影や景色を楽しむ人たちが欄干に集まる(筆者撮影)

 22年前、カーフェリーで川を渡るために順番待ちをしでロスタイムに見舞われたあたりも、今では日本の政府開発援助(ODA)によって立派な「つばさ橋」が建設され、地元の人たちの眺望スポットとして人気の場所になっている。景色を眺めるために橋の途中で路駐するバイクは危なっかしいものの、この橋のおかげで移動時間が劇的に短縮されたのは確かなようだ。人とモノの行き来がスムーズになった証拠に、橋の周囲には、以前はなかった街や市場ができている。

 ここまで来れば、プノンペン市内まで残り3時間半ほどだ。途中、トイレ休憩に立ち寄ったガソリンスタンドは、以前、よく見かけた掘っ建て小屋のような類ではなく、小綺麗で、併設された商店には、ベトナムやタイから輸入されたスナックやドリンク、日用品などが、ところ狭しと並んでいた。その後も、車窓を眺めていると、国道沿いのあちこちに日の丸が描かれたすすけた看板が立っていたり、行き交う車の中に日本語が書かれたままトラックが走っていたりするのを見かけた。

日本語が書かれたままのトラック(筆者撮影)

 

のどかさと発展の狭間で

 国境を越え、プノンペン市内に近づけば近づくほど、渋滞が激しくなった。高層ビルが目につくようになり、そのほとんどに、中国語で書かれた看板や「分譲中」という横断幕がかかっているのに気づく。個人的な感想だが、ベトナムよりもカンボジアの方が、外資が進出するハードルが低いように思う。ドル建ての定期預金の利率一つとっても、ベトナムでは概ね年2%前後なのに対し、カンボジアでは5%前後と各段に良い。カンボジアにとっては、外貨の保有と運用ができるというメリットがあり、外国人にとっては、資産運用先としても有力な候補となり得るためだろう。

プノンペン市内に近づくと高層ビルが増えてきた(筆者撮影)

 結局、この日はホーチミンを午前6時半に出発し、午後1時過ぎにはプノンペン市内のリバーサイドと呼ばれる繁華街に到着した。バスを降りて、在住の友人と合流する場所まで、トゥクトゥクで向かった。以前は、流しの、あるいは客引きの車を捕まえ、値段を交渉して乗ったものだが、いまや配車アプリが普及し、ストレスもトラブルもなく、あっという間に移動できる。今回利用したのは、近年、東南アジアで急速にシェアを広げている「Grab」だが、ローカルアプリの「PassApp」も一般的だという。22年前と比べると、移動も滞在中もすべてがあまりにもスムーズで、少し怖くなるほどだ。

 トゥクトゥクに揺られ、生あたたかい風に吹かれながら、ありがたいような寂しいような気分をかみしめた。これからも、こうして陸路で国境を越え、定点観測を行いつつ、2つの街の移ろいを見続けていきたいと思う。

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