「バングラデシュの政界は女性政治家を育てよ」
中央選管の規定割合が達成されない実態を地元紙が批判

  • 2021/6/13

 「女性の社会進出度」をはかる指標としてしばしば活用される女性政治家の人数。しかし、その数字は必ずしも国全体の女性の状況を反映しているものではない。5月28日付のバングラデシュの英字紙デイリースターは、社説でこの話題を採り上げた。

バングラデシュで女性政治家の育成が求められている(c) Noelle TB / Pexels

12年間の年限を9年延長

 「首相をはじめ、国会議長や野党党首も、全員が女性であるにもかかわらず、中央選挙管理委員会に登録している39の政党のうち、党内委員会で最低33%を女性にするという要件を満たす政党が、過去49年間にわたって一つもないのは、非常に遺憾だ」
 この日の社説は、こんな書き出しで始まった。デイリースター紙の報道によると、中央選管は、各政党にあと9年間の猶予を与え、期限内に女性政治家の人数を増やすよう求めたという。社説は、中央選管が2008年にも12年間の期限を設け、各政党に女性政治家の数を底上げするように求めた事実を指摘した上で、「にも関わらず、なぜ、この間、女性政治家が育たなかった上、さらに9年間も年限を延長しなければならないのか、理解に苦しむ」と指摘する。
 「中央選管がまもなく法務省に提出する政党登録法案が国会で認められれば、新たな政党登録法では、政党に属する女性政治家を33%以上に増やすという要件の期限は2030年まで延期される」

女性の政治参加に高い壁

 社説によれば、新しい法が成立すれば、1972年の法律に代わって施行されることになるという。この1972年の法律には、すべての政党は33%が女性の政治家でなければならない、という規定があり、これを満たさない場合は、政党登録の停止も認めている。
 「しかし、政党の大小にかかわらず、この要件を満たした政党は残念なことに一つもない。アワミ連合は26%、BNPも11%だ。わが国の政党は、女性の政治的エンパワメントに関しては全く期待に沿っていない」と、社説は手厳しい。
 「長い年月を経ても、我々の政党が女性の政治参加の重要性を理解していないことは残念だ。私たちは、女性の指導力が公的機関で発揮されていた例を知っている。すべての政党は有能な女性政治家候補を見つけ、育て、指導力を持たせる義務がある。そのことが、政党だけでなく、国家のためにもなる」
 世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ指数」の2021年版によると、バングラデシュは65位だった、日本の120位に比べれば、ずっと「男女差」がない国だと言われているが、実態を見れば、指導者クラス以外に女性の政治参加のすそ野が広いわけではないということが分かる。それでも女性政治家が首相や党首として活躍しているだけで、日本とは格段の差があるのだが、社説はさらなる努力を各政党に求めている。

 

(原文:https://www.thedailystar.net/editorial/news/political-parties-should-take-womens-representation-seriously-2097541)

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