国連安保理がガザ「即時停戦」決議を採択
アメリカの棄権により実現した決議をアジアのイスラム教国はどう報じたか

  • 2024/4/14

 国連安全保障理事会は3月25日、日本を含む非常任理事国10カ国が共同提案した、パレスチナ自治区ガザにおけるラマダン中の即時停戦を求める決議を採択した。安保理が即時停戦を求める決議を可決したのは、2023年10月に戦闘が始まってから初めてのこと。アジアのイスラム教の国々はこれをどのように報じたのだろうか。

国連安全保障理事会が可決したラマダン期間中のガザ地区での停戦決議について、リンダ・トーマス・グリーンフィールド米国大使兼国連代表は、投票を棄権する意向を示した。ラマダンが明ける4月9日までという期限付きではあったものの、国連本部ではこれがガザでの戦闘停止を求める最初の要求となった。(2024年3月25日撮影)(©️AP/アフロ)

イスラエルの「殺人キャンペーン」の即時停止を求めるパキスタン

 イスラム教を国教とするパキスタンの英字紙ドーンは、この決議の翌日、3月26日付で社説を掲載した。

 社説は、これまで停戦決議に拒否権を発動してきたアメリカが今回は棄権に回った背景として、「イスラエルの蛮行に対する国際的な反発に加え、米大統領選が迫るなかでバイデン大統領がイスラエルの『殺人キャンペーン』に『鉄壁の支持』を与えたことに米国内で批判の声が上がったため」だと分析している。その上で、アメリカの行動について「即時停戦に対して賛成ではなく棄権ではあったものの、虐殺を止めようとするあらゆる試みを妨害するよりは、はるかにましだ」と述べた。

 また、社説はガザの人々の苦しみに思いを馳せて、「ガザの人々の苦しみは信じられないほど甚大で、(停戦決議が可決されたとしても)祝福の要因はほとんどない。だが、少なくとも、連日の死と破壊から解放され、愛する人を悼み、長くつらい癒しのプロセスを始めることができるだろう」と述べる。さらに、「世界保健機関(WHO)によれば、ガザの子どもたちは死の瀬戸際にある。この不条理な戦争で孤児になった数千人に上る子どもたちへの医学的、精神的な支援の必要性が増している」と指摘。殺戮を目の当たりにして傷ついた子どもたちが置かれている深刻な状況への強い懸念を示した。

 「今、世界の目がイスラエルと、その庇護者であるアメリカに注がれている。イスラエル政府は停戦決議に従うのか、それとも、この犯罪的なキャンペーンを続け、ならず者国家と呼ばれ続けるのか」。ラマダンは4月9日に終わる。それまでの間に、行方を握るこれらの国々がどのように動くのか注視したい(編集部注:停戦決議が可決されてからも、ガザのさまざまな地域でイスラエル軍の攻撃が続けられた)。

バングラデシュは「自衛」の名の下の破壊行為を非難

 同様にイスラム教を国教とするバングラデシュの英字紙デイリースターは、停戦決議に先立つ3月18日付で、「イスラエルによるガザ南部ラファへの侵攻を阻止せよ」との社説を掲載した。

 この社説は、イスラエルのネタニヤフ首相がガザ南部のラファに地上軍を送り込む方針を示したことを受けて掲載されたもの。ネタニヤフ首相は「アメリカの支援がなくても実行する」との強硬姿勢を崩しておらず、イスラム組織ハマスの壊滅を掲げている。

 社説は、イスラエルのこの姿勢に「心を痛めている」とし、「ネタニヤフ首相は、ラファに避難を強いられた100万人以上の避難民にさらなる恐怖を与えようとしている」と強く非難。「国際的な圧力や同盟国からの要請にもかかわらず、ネタニヤフ首相はイスラエルの自衛権を主張し、すべてを無視すると宣言している。しかし、これまでを振り返ると、イスラエルが主張する『自衛権』とは、パレスチナ人を攻撃し、破壊する自由と同義だと言わざるを得ない」と、訴えた。

 さらに社説は、「世界はパレスチナ人が完全に消滅するまで傍観し続けることはできない」と主張し、「和平協定を実現するために、国際社会全体が意味のある行動をとる時だ」と、強調した。

(原文)

パキスタン:

https://www.dawn.com/news/1823838/ceasefire-finally

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/israel-must-be-stopped-invading-rafah-3569401

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