デジタル・バングラデシュ(第2話)
テクノロジーが描く水から始まる創世記、その筆下ろし

  • 2019/10/15

デルタの大国が直面する気候変動問題

   いまから百年後に

   わたしの詩の葉を 心をこめて読んでくれる人

   君はだれかー

バングラデシュはデルタ大国 (c) istock.com/Kabir Uddin

 これは、1913年にノーベル文学賞を受賞したタゴールの詩、『百年後』 の一節である。春の季節の自然の恵みを謳う、とても美しい詩だ。

 百年後の世界で、私たちと同じようにタゴールの詩に共感する「だれか」はいるのだろうか?

 今年9月23日、アメリカのニューヨークにある国連本部で開催された 「国連気候行動サミット2019」。話題となった16歳のスウェーデン人で環境保護活動家のグレタ・トゥーンベリさんの怒りの抗議は、そのまま地球の悲鳴にも聞こえる。

 バングラデシュは、デルタ大国である。インド洋・ベンガル湾の最奥部に位置し、パドマ川(上流のインド領内ではガンジス川)、ジョムナ川、メグナ川といった大河の下流、あるいは河口部にある。国土の約50%は標高6~7m以下であり、約68%の土地が、洪水や土壌浸食の危険にさらされている。また、パドマ川は雨期には流量が増加し、洪水をバングラデシュにもたらす反面、乾期には水量がきわめて減少する。パドマ川の上流はインド領となるが、インドはバングラデシュ国境手前に堰を建設し、乾期には川の水をインド領内で利用してしまうため、バングラデシュでは水量が極端に減少するという、国境を超えた空間政策課題も抱える。そんなバングラデシュにとっても、気候変動は看過できない地球的規模課題の一つである。

 今年4月、国際連合児童基金(UNICEF)はあるレポートを発表した。これまでに気候変動によって移住を余儀なくされた子どもは600万人に上り、2050年には2倍に膨れ上がると指摘し、政府に対策を求めている。

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