コロナ禍が残した子どもと教育への影響
バングラデシュとネパールの社説を読む
- 2022/6/23
新型コロナの感染拡大が始まって2年半が過ぎた。ワクチン接種の広がりや、予防策の浸透で世界は少しずつ「ウィズコロナ」の新しい生活に踏み出している。この期間、影響を受けたものは数知れない。その中でも注目されなければならないのは、子どもたちの教育への影響だ。
バングラデシュとネパールの英字紙が、それぞれ6月上旬の社説で、この問題を採り上げた。
子どもたちの心の傷を危惧
バングラデシュの英字紙「デイリースター」は、6月2日付で「コロナ禍から回復するために、子どもたちには適切な支援が必要だ」との社説を掲載した。
「2年余りのコロナ禍は、教育を含む社会のさまざまな側面で深い傷を残した。学齢期の子どもたちへの影響は特に大きく、突然の休校や慣れないオンライン授業、コロナ禍がもたらす死の物語に直面し、受け止められずにいた。大切な人の死を目の当たりにしてトラウマを負った子どももたくさんいる。これらすべての経験は、彼らの精神面での健康や教育に深い影響を与えるものだ」
中でも影響が大きいと社説が指摘するのは、地方に住む女の子たちへの影響だ。コロナ禍によって多くの家庭が経済的に困窮した結果、まだ若いうちに結婚をさせられる少女たちが多いという。社説によると、こうした結婚をした女性たちは、まだ子どものうちから人生の選択肢が狭められ、中には家庭内暴力などに苦しむこともあるという。
もちろん少女たちだけではない。少年たちも学校へ行かずに働くよう強いられるケースが少なからず見られるという。社説は「子どもたちの精神を健全に保つことは、特に重要だ。政府は、経済を復興して各家庭の生計を建て直すことに加え、こうした子どもたちへの支援に優先的に取り組まなければならない」と、強調した。
ロックダウンの後遺症
「ロックダウンの後遺症」と題した社説を掲載したのは、ネパールの英字紙カトマンドゥ・ポストだ。
同紙は6月8日の社説で、4月に実施された国際連合児童基金(ユニセフ)の調査を引用してこの問題を論じた。ネパール国内の約6000人を対象に、新型コロナの社会的な影響をさまざまな側面から追跡調査したもので、4月に行われた調査によれば、回答者の約半数が「子どもたちの学力が低下している」と感じているという。
社説はその原因として、コロナ禍での度重なるロックダウン、それに伴う休校とオンライン授業を挙げる。
社説は、子どもたちを長時間にわたりスマートフォンなどのデバイスに「釘付け」にするオンライン授業について、専門家が早い時期から警告を発していたと指摘する。とはいえ、それに代わるような信頼できる手段は見つからず、保護者が教師の代わりを務めることもできなかったため、教育の質が落ちてしまった、というのだ。
さらにネパールでは、オンライン授業にアクセスできなかった子どもたちも多かった。6月に発表されたネパール国内の調査によれば、オンライン授業のデバイスにアクセスできたのは、就学年齢の子どもたちのわずか3分の1だけだったという。
経済やIT環境など状況の違いはあれ、コロナ禍が子どもと教育に影響を与えたことは、全ての国に共通する。バングラデシュやネパールのように、それぞれの国で専門機関による調査も実施されているだろう。「子どもとコロナ」のさまざまな側面について、調査や報道が多角的にあぶりだし、主要な問題として取り組まれることが必要だ。
(原文)
バングラデシュ: https://www.straitstimes.com/asia/children-need-proper-support-to-recover-from-pandemic-daily-star
ネパール: https://kathmandupost.com/editorial/2022/06/08/the-lockdown-effect