デジタル・バングラデシュ(第2話)
テクノロジーが描く水から始まる創世記、その筆下ろし

  • 2019/10/15

怒れる水の神を、いかにして鎮めるか

 水は、人間にとってなくてはならない資源であり、「恵み」と「災い」の両面を併せ持つ。その神秘性から、古代より人間の信仰の対象であり続けた。サラスヴァティーは、芸術・学問などの「知識」を司るヒンドゥー教の女神で、インドの最も古い聖典『リグ・ヴェーダ』において、聖なる河であったサラスヴァティー河の化身として神格化されたことに起源を持つ。大陸と海を渡った日本では、神仏習合により七福神の弁財天として信仰されてきた。

芸術・学問などの「知識」を司るヒンドゥー教の女神、サラスヴァティー (c) istock.com/ Shooter_Sinha_Images

 バングラデシュは、水産資源の惠みを豊富に有する反面、河川に囲まれた国土であるため、水災被害が多い。バングラデシュの気候は熱帯性で、10月から3月の冬季は温暖であるが、3月から6月の夏季は高温多湿で、6月から10月にはモンスーンが襲来する。そして、毎年のように、洪水(例年、国土の約3分の1、ひどい年は3分の2が浸水すると言われている)やサイクロン、竜巻、海嘯といった自然現象が起こり、一時的な被害にとどまらず、森林破壊や土壌劣化浸食といった被害を全土に及ぼすのだ。

 統計を確認すると、バングラデシュ政府が2017年に発表した” Disaster Management Reference Handbook”によれば、災害の種類は、「嵐」(52.8%)が一番多く、次いで「洪水」(31.1%)、そして「異常に高い気温」(11.1%)と続く。また、経済損失で見れば、「洪水」(58.1%)と「嵐」(38.3%)が損失の9割以上を占めており、バングラデシュにとって、「水」を制することがいかに大切か、分かるだろう。

バングラデシュの人々は、雨季のたびに洪水に悩まされてきた (c) istock.com/ Supratim Bhattacharjee

 アジア開発銀行(ADB)をはじめ、国際機関のバングラデシュに対する開発援助融資の動向を見ると、やはり水セクターの優先度がとても高い。ADBがアジア太平洋地域のプロジェクト形成と実施において高度技術(high-level technology)の活用を促進するため、2017年に設立した信託基金(日本は2年間で4,000万㌦の拠出を予定している)でも、2019年度には、優先度の高いセクターとして「水」が挙げられている。ほかに、「エネルギー」「運輸」「都市計画」「健康」などがある。

 バングラデシュ政府は2018年9月、総額51億5,000万㌦をかけた「バングラデシュ デルタ・プラン(Bangladesh Delta Plan 2100)」を承認した。このデルタ・プラン2100(BDP2100)とは、計画委員会総合経済局で現在、策定が進められている超長期計画のことで、気候変動に適応し、災害リスクの軽減や水の安全を図り、国家の食糧安全保障と経済発展に貢献することを目指すものである。さらに政府は、これらの目標がすべて、直接的または間接的に持続可能な開発目標(SDGs)の目標2「飢餓をゼロに」や、目標6「安全な水とトイレを世界中に」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、および目標14「海の豊かさを守ろう」に関連しているとも述べ、このデルタ・プラン2100(BDP2100)がなければ、バングラデシュは気候変動の影響と自然災害によって毎年、GDPの1.7%以上を損失するだろうと予測している。

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