【歩く・見る・撮る】― 写真民俗誌/民族誌へのいざない ―
ミャンマー(ビルマ)から ㉑ <大工さん>

  • 2024/5/9

ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全権を掌握した」と宣言してから3年以上が経過しました。この間、クーデターの動きを予測できなかった反省から、30年にわたり撮りためてきた約17万枚の写真と向き合い、「見えていなかったもの」や外国人取材者としての役割を自問し続けたフォトジャーナリストの宇田有三さんが、記録された人々の営みや街の姿からミャンマーの社会を思考する新たな挑戦を始めました。時空間を超えて歴史をひも解く連載の第21話です。

 ㉑<大工さん> 

 ビルマ(ミャンマー)で1年間、暮らしていたある日、ふと違和感を覚えた。うまく言えないのだが、「何かがいつもと違う」と感じたのだ。もちろん、異国に暮らしているのだから、言語や衣食住など、生活するうえで明らかな違いがあるのは当然なのだが、そうしたことのほかにも、何か理由があるようだった。
 よくよく観察すると、ミャンマーに暮らしながらも、身の回りにはいくつもの「外国」が溶け込んでいた。また、今と昔が混じり合っていることにも気が付いた。思えば、1990年代から2020年代にかけて、こうした時空が混然一体となった事象をミャンマーのいたるところで見かけたようだ。たとえば、テーブルや椅子などの家具を作ったり、家を建てたりする大工さんの道具にも、それはよく表れていた。ほんの一例を可視化してみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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