2020年のカンボジア経済見通し
不正とのたたかいや労働集約型産業の偏りの是正など指摘
- 2020/1/9
順調な経済成長を続けるカンボジアだが、2020年はやや堅調な伸びにとどまりそうだ。カンボジアの英字紙「クメール・タイムズ」は、12月に掲載した社説で、同国経済の2020年の課題について解説している。
不動産バブルも懸念
社説はまず、2020年のカンボジアの経済成長率が7%をやや下回る見込みだとする各種国際機関の共通の見方を紹介している。中国の経済後退、欧州連合の特恵関税制度の撤廃の可能性、国内金融セクターの脆弱さなどが影響しているという。
カンボジアがこれらを乗り越えるために必要なこととして、各機関はさまざまな分析を行っている。たとえば、世界銀行は、投資環境の改善、エネルギーとロジスティックスのコストの軽減、国内外のサプライチェーンの強化、労働生産性の向上などが必要だと指摘している。一方、国際通貨基金(IMF)は、金融市場への政治的な介入について触れ、増加する貸付、金融セクターの脆弱さ、競争力やガバナンスの構造改革などへの対応策が必要だと指摘している。
さらに、アジア開発銀行(ADB)は、より高付加価値な製品やサービスによる経済成長へと転換する必要性を指摘する。過熱する不動産セクターへの貸付のリスクを軽減すること、賃金上昇を裏付ける熟練労働者の育成、質の高い投資の誘致が必要で、それらすべてにしっかりとしたガバナンスと制度が求められる、という。
こうした分析を紹介した上で、社説は次のように「自己分析」する。
「2020年には、はびこる腐敗と従来以上に具体的にたたかうことや、ビジネス投資環境を改善する構造的な改革が必要になるだろう。熟練労働者の育成は、ADBの6000万ドルに及ぶ援助を得て、さらに強化される。他方、官民のパートナーシップが労働者育成には欠かせないが、大学や職業訓練センターはいまだしっかりとしたパートナーシップを築けていない」
また、不動産セクターの過熱ぶりについては、「不動産バブルの崩壊も懸念され、それは金融リスクにもつながりかねない」と、社説も懸念を示し、金融リスクを軽減するためにも、税徴収の透明化、公的サービスの室の向上、社会保障の強化などが必要だと述べている。
EUの特恵関税制度撤廃問題
カンボジア経済で今、最も注目されているEUによる特恵関税制度の撤廃について、社説は「2つの見方がある」と、解説している。一つは、欧州を主な輸出先としている縫製業・製靴業セクターに大きな影響が出るという見方。もう一つは、特恵関税がなくなっても、乗り切ることができるという見方だ。
EUは、この2月にも撤廃について結論を出す見込みだが、これについて、社説は「部分的な廃止となる可能性がある」と、指摘する。縫製業・製靴業セクターで働く人々への打撃を小さくするためだという。その上で、社説は、「どのような結論になったにせよ、カンボジアの労働集約型産業が縫製業や製靴業に偏っていることを見直す必要があり、今回はその良い機会だ」と、している。
また、EUが特恵関税制度を撤廃する理由としてカンボジアの人権状況の悪化を挙げていることについて、「EUが本当にカンボジアの人権を懸念するのであれば、地方の貧しい人々の暮らしにも目を向けるべきだ」と、指摘する。そして、カンボジア国民にとって明るい未来を築くためには、力をふりかざすのではなく、熟慮と対話が必要なのではないか、とEUに問いかけている。
(原文:https://www.khmertimeskh.com/50670260/cambodias-economic-outlook-2020)